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「おかん! だいき起きた!
おーい、甲子園のスターやでー?笑」
望が、大毅んとこ行きたい!って早起きしてきたから、
次の日は、先生にお願いして、
面会時間の少し前から病室に行かせていただきました。
とりあえず、時間つぶしに2人でサンドイッチを作って。
ガランとした病院に2人で忍び込み、
病室で大毅の目がさめるのをひたすら待っていました。
「甲子園のスター!?
途中参加のベンチが何ゆうてんねん。」
しかも、一回あんた三振やったしなぁ?
大毅に意味のわからんテンションで絡む望に、
ひたすら私はツッコンでいたのですが、
そんな空気じゃないことに気づくまで、
そう時間はかかりませんでした。
「……だいきっ、? おーい。 どこ…みてるん、?」
薄く開き、まばたきもせず、
ただただぼーっと空気を見つめる、目。
そして、
その大毅の表情が少し柔らかくなったかと思えば、
突然、心電図のモニターが、
異常なアラーム音を鳴らし始めました。
「……だいきっ、だいきっ!!!!
なぁ、しっかりしろって!! だいきっ!!!」
知らん間に目を閉じていた大毅の掛け布団を、
力強く握り、気持ちのまま揺さぶる、望。
私は、息をするのを忘れて、
ただただ、その場に立ち尽くしました。
「失礼します、 だいきー? 目ぇ開けれるかー?
ちょっと弟くんごめんな、危ないから退いといて?」
その音を聞きつけ、
病室に飛び込んできた、桐山先生。
あと、もう1人お医者さんと、看護師さんが数人。
「DC持ってきて! 酸素全開!」
「心マ開始します!」
「輸液もスピードあげて!」
「DCきました!」
大毅の周りに、どんどん人が増えていって、
どんどん機械が増えていって。
「セットしました!」
「離れて!」
私たちは蚊帳の外。
望は早くも泣き始めて、私はただただ呆然と。
胸はベットが沈むぐらい押さえつけられ、
細い身体は電気が与えられるたび軽くはねて。
それでも異常なアラーム音が鳴り続ける中、
先生は、私にこう言いました。
「……旦那さんに、ご連絡をお願いいたします、」
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のん(プロフ) - この作品大好きです。素敵な作品をありがとうございます。表現素晴らしいです。涙が止まりません。一瞬でファンになりました。 (2020年7月25日 2時) (レス) id: 56343318d5 (このIDを非表示/違反報告)
ごま - 声出して泣くくらい本当に号泣です。素敵な作品に出会えてよかったです!ありがとうございます。 (2020年5月10日 1時) (レス) id: d07563048d (このIDを非表示/違反報告)
いっちゃん(プロフ) - 初めまして!久々に小説で号泣しました。友人に勧めたくなるくらい素晴らしいお話に出逢いました。ありがとうございました。 (2020年5月6日 17時) (レス) id: a6f24fa91f (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - はじめまして、知り合いに勧められて一気に読みました。途中から涙が止まらなくて、親には心配されました笑多分何回もまた読みに来ると思います、最高の作品でした。作者さんの他の作品も読んでみますね。素敵な作品をありがとうございました。 (2020年5月5日 9時) (レス) id: f84ebdac68 (このIDを非表示/違反報告)
たぁ(プロフ) - こんにちは。もう一度読みたくなってきちゃいました笑 ほんとにこの作品素晴らしいです>_< 何度涙を流したことか…最高の作品をありがとうございます。 (2020年5月4日 17時) (レス) id: 4b1a527b81 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:茉都香 x他1人 | 作成日時:2017年1月4日 18時