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「………っ、おかぁさっ、」
大毅が、私のことをお母さんと呼ぶ時。
それは決まって、何か大きな不安を抱えている時でした。
「…よしよし、大丈夫大丈夫。
おっ、と、ごめん、1回座ろっか?」
とりあえず、抱きしめて。
気持ちのまま、頭を撫でて。
そしたら思った以上に私の方に大毅の体重がかかり、
私はあっけなく、グラついてしまいました。
そのまま、支えられなくなって、
玄関の床の上に、2人でペタンと座り込む状態。
こんな息子1人もしっかり支えられないなんて。
自分が情けなかったです。
「よいっしょ、マサオ離すよ?
あ、手も血出てんね。あとで消毒しよっか?
ほんで足。 足は…こうしたほう方が楽?」
私の肩に顔を当ててしくしく泣きじゃくりながらも、
うんうん、と声には反応してくれる、大毅。
その足は、
もう、鉛のように動かなくなっていました。
「ってかここ寒ない? リビングの方があったかいよ?
…あ、もうちょっと? はいはい、
また動けるようになったら言うてくださーい。」
そんな中でも私は明るく、なるべく明るく、明るく。
背中をトントンと一定リズムに叩きながら、
ずーっと1人で喋って。
また望に、無理してる、って言われるな。
そう思いましたが、この時ばかりは、
明るくしていないと、
とてもその場にはいられませんでした。
「…落ち着いてきたね?」
「………ん、ぁっち、」
「あっち行く?」
「……ん、」
「…よっしゃ、じゃあ…とりあえずここ座ろっか?」
身体を支えて、マサオの助けと共に、
とりあえず、大毅を玄関の段差へ。
そこから転ばないよう後ろから手を添えれば、
壁を伝って上手に立ち上がった、大毅。
そしたら、なんか急に、
大毅がちっちゃい時のことが、
フラッシュバックするように思い出されました。
なんで今?って思うタイミング。
でも思い出されてきたものは仕方ありません。
初めて立った時、初めて歩いた時、
初めてお母さんって呼んでくれた時。
いつもこうやって背中を支えてきたけど、
その時はまだ、私は大毅の横で立膝をついていました。
なのに今は立っている私の頭のところに、彼の背中。
はぁ、大っきくなったんだなぁ。
この時はなぜか、ずっとそう思ってました。
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な - 昔から大好きなお話なので、もしよろしければ Wordに内容を書き出させて頂いても宜しいですか? どこかに投稿やアップなどは一切致しません。 (2023年4月12日 23時) (レス) id: 144323ef08 (このIDを非表示/違反報告)
mothernature110(プロフ) - 24時間テレビ出てほしいですよね (2017年4月2日 19時) (レス) id: 167eecf0f9 (このIDを非表示/違反報告)
あかり(プロフ) - すごく感動しました。更新大変だと思いますが、これからもお願いします! (2017年1月4日 17時) (レス) id: 129d5a1fa9 (このIDを非表示/違反報告)
こためるこ(プロフ) - ほんとに号泣です ;_; もう涙止まりません! 更新頑張ってください! (2017年1月3日 2時) (レス) id: faa6f22767 (このIDを非表示/違反報告)
smile06302050(プロフ) - はじめまして!Twitter絡ませていただきます! (2017年1月2日 23時) (レス) id: a1e554584d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:茉都香 x他1人 | 作成日時:2016年12月27日 20時