ACEになりたくて (ページ8)

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初めてAさんとちゃんと話す機会があったのは、ご飯に誘ったときだった。
それまではずっと、Aさんの歌声や表情を遠くから見ていただけで、声をかける勇気すらなかった。人見知りで、距離を作るタイプだということも知っていたから。

「仲良くなれないかもな…」

心の奥で小さくため息をつく。期待と緊張が入り混じって、手のひらは少し汗ばんでいた。

店に着くと、Aさんは普段の雰囲気とは少し違い、柔らかく、ほんのり警戒を解いたような表情をしていた。
目線はあちこちを泳がせていて、俺が話しかけてもすぐには反応しない。けれど、時折見せる微笑んで、唇の端がくっと上がる瞬間が、どうしても心を揺さぶる。

「深田くんって、意外と話しやすいんだね」

Aさんがふっと口角を上げた瞬間、胸が高鳴った。
その笑みは、ちょっと罪めいた感じで、見る人の心を軽く乱すような。普段のクールさとのギャップに、思わず惚れそうになるのを自覚した。

この人は罪な女だ。
笑うだけで、何気ない一言だけで、人の心をぐらつかせる。
それなのに、無邪気に楽しそうにしている。

「もっと話したい、もっと知りたい」

そう、心の中でつぶやく自分に少し照れた気持ちが混じった。

ご飯の最中も、Aさんは小さな仕草でこちらを見たり、軽く笑ったりして、俺の意識を釘付けにする。

その日の帰り道、Aさんに思い返してこう言った。

「Aさんも、意外と話しやすいんですね。微笑まれた瞬間。俺、完全にやられそうでした。」
「………私、グループ内恋愛はしないよ？」

別れ際に放ったその言葉は俺をからかうような言葉だった。そして、一言は、俺の胸に深く刻まれ、忘れられなかった。
振り返ったときの、ほんのり色づいた頬と、目尻の笑み。
それが余計に罪めいて見えた。