【短編集】恋のうたを聞きながら vol.3【ジョジョの奇妙な冒険】

癒し【リゾット･ネエロ】リクエスト･あいすすとろべりーさん ページ8

久しぶりに自分の目を疑った。


「報告書…」

　そう言って俺のデスクの前に立ったAに、俺は一瞬言葉を失った。黒い毛で被われたツンと立った三角の耳、腰のあたりからするりと伸びる、これまた黒い毛で被われた長い尻尾…ホルマジオが連れてくる猫と良く似たものが、目の前のAにくっついている。

「A…それは一体…」

「あー…スタンド。始末したターゲットに最後にょ最後にやられた。スタンドの解除はいつににゃるかわからにゃいわ。ごめんにゃさい」

「…そうか」

　普段なら、最後まで気を抜くな、と叱るところだが、Aの姿に俺は何となくそんな気にもなれず、ただAを見つめていた。

「今回は死にゃずに済んだけど、次は気をつける」

「ああ…」

　な行が上手く発音出来ないせいか、いつもより言葉数が少ない。そして、少し恥ずかしそうだ。
　一見すれば堂々としているように見えるが、むしろ開き直ってこうしているらしい。
　思わず、ふっと頬を緩めていた。

「ッ！リゾット！あにゃたまで！！」

「いや…可愛いと思ってな」

　俺の言葉にAが一瞬で赤くなる。やはり、可愛らしい。

「…触れても？」

　Aの顔を覗き込むと、更に顔が赤くなった。

「すっ…好きに、すれば？」

「ありがとう」

　デスクから立ち上がり、そっとAに近づくと尻尾が脚にまとわりついた。Aの目がはっと見開かれ、慌てて尻尾を離れさせる。

「…あのままでも良かったんだぞ」

　きゅっと口を結ぶ表情が愛おしい。そっと頭に手を置くと、ゴロ…とAが喉を鳴らした。

「…はは、癒されるな」

　バシ、と尻尾で俺を叩くAの顔は真っ赤だった。
　普段は余裕のある女で滅多に表情を崩さないから、こんな顔は滅多に見られない。それに感情の起伏がわかる尻尾のおかげで、いつもよりAの気持ちがわかる。

(なるほど…悪くない)

　首筋を撫でられゴロゴロと喉を鳴らすAを見つめ、俺は微笑んだ。

(…癒される)

　ゴロゴロと喉を鳴らす音が耳に心地よい。仕事も一段落しているし、今日はアジトに来る奴はいない。

「A、少し付き合ってもらえるか？」

「にゃにを…！」

　ひょいとAを抱え上げ、アジトのソファに座ると、Aを抱えたまま倒れた。

「…疲れてるにょ？」

「ああ。だから、癒されたい」

「…そ」


それにゃら仕方にゃいわね、なんて言ってAはゴロ…と喉を鳴らした。

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