Daylight【ブローノ・ブチャラティ】 ページ30
朝が来れば。
テーブルの上には飲みかけのワインの入ったグラスが2つと、少し萎れた赤いバラの花。暗い部屋の中で、俺は腕の中で眠るAを見つめていた。
「…。」
最後まで、強い女だった。
「別れよう」と告げた時、Aは分かったと頷いて、何も聞かなかった。泣き叫んで、詰られて、責め立てられたって文句は言えない俺の行動を、Aは受け止めてくれた。
「…すまねぇ」
眠っているお前に囁きかけ、俺はそっと額にキスを落とす。強い女、とはいえ、堪えないとは思っていない。俺の言葉を聞いた時、目の端に光るものが見えたことを見逃すことは出来なかった。
(いつかこんな日が来るとは…分かってはいたが…)
ボスへの漠然とした不満、それがいつか溢れることはわかっていた。いつか『この道』を辿ることになるとはわかっていた。
それでも、こんなに早く来るとは思っていなかった。
「…お前を、巻き込みたくないんだ」
朝になれば、俺はお前の前から居なくなっていなければならない。日が昇れば、この部屋から立ち去らなければならない。そうしなければ、何の罪もない、何の関係もない彼女を巻き込むことになるから。
「…」
強くAを抱きしめる。きっとこれが最後になるだろうから。だから、せめて忘れないように、俺の記憶に刻んでおきたかった。
Aは何も言わない。閉じた瞼は開かれない。
(ああ…夜が明けてきた)
カーテンの少し開いた窓の外の空は、端に少し光が見え始めている。もう間もなく夜明けだろう。
(行きたくない)
明ける空を眺めていると、何となくそう思ってしまった。抱きしめる度に、キスをする度に、見つめる度に、自分が未だにAを深く愛していると気が付かされる。
(でも、行かなくては)
俺を待つ仲間のために。
守ると決めたもののために。
そして、俺自身のために。
「…」
俺は名残惜しさを堪えて、起き上がった。優しく、馴染んだ温かさが離れた時、どうしようもないほど辛いと思ったが、それも耐えた。
「A、俺は行くよ」
目を閉じているAに声をかける。
「ありがとう…そして、どうか幸せになってくれ」
立ち上がった俺に背を向けているAに、俺はそう呟いた。
「愛している」
微かに差し込む朝の光の中、Aの閉じた目から一筋の涙が零れ落ちるのが見えた。
幼馴染【虹村形兆】 リクエスト・モカさん→←何とか言ってよ【トリッシュ】リクエスト・達也さん
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りと(プロフ) - ∴さて、どこへ行こうか。さん» リクエストありがとうございます!返品が遅くなってしまい、大変申し訳ありません<(_ _)>リクエストの方、承りました!ここではお話がいっぱいになってしまいましたので、続編の方で取り扱わせて頂きたいと思います(^^♪ (2021年8月23日 23時) (レス) id: 4416da2808 (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - ?さん» ?さん、リクエストへの返信が大変遅くなってしまい申し訳ありませんでした<(_ _)>リクエスト承りました!ここではお話がいっぱいになってしまいましたので、続編の方で書かせていただきますヽ(*^^*)ノ (2021年8月12日 0時) (レス) id: 4416da2808 (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - モカさん» 返信がとても遅くなってしまい、申し訳ありません!リクエスト、承りました! (2021年7月19日 22時) (レス) id: b238753ec9 (このIDを非表示/違反報告)
∴さて、どこへ行こうか。 - リクエストです。普段甘えない花京院典明の恋人(夢主)が甘える、という内容なのですがよろしいでしょうか?出来れば生存ifを希望します… (2020年11月6日 19時) (レス) id: a195df0bb5 (このIDを非表示/違反報告)
?(プロフ) - リクエなのですが、露伴先生と病弱な夢主が恋人関係なのですがその病弱な夢主が意外にも悪徳的なスタンドを持っている事を知って何があったのかと聞くと泣きながら過去にあった親からの虐.待などを夢主が語っていき、その日は思う存分甘えされるみたいなのをください! (2020年3月27日 16時) (レス) id: d243ef7454 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りと | 作成日時:2019年1月9日 21時