【実況者】恋愛恐怖症3【ky】

Part125 ページ30

ーー「え寝た？」




私があまりにも毛布の中で黙り込んでいるものだから、寝たのかと思いそう声をかけるキヨさん。
起きてますよ。そうポツリと呟けば背中の方をさすってトントンと軽く叩いてくれる。
時折聞こえてくる雷の音も、そこまで気にならなくなっていた。




家の中で男性とこんな近くで、毛布で壁があるとは言えほぼ抱き合っている状態で寝転がっているのにも関わらず、私の心は割と穏やかだ。
前の私だったら落ち着かないどころか、余計に恐怖心が強まっていたと思う。




仲のいい特別な人だから。そんな曖昧な言葉で片付けられるような気持ちなのだろうか。
考えてもうまく説明のつかない安心感に戸惑うしか無かった。




「Aちゃん。」
ふとキヨさんの声がする。
反射的に毛布から顔を出そうとすると「こら」とまた毛布の中に戻された。




「…俺の事、怖い？」
『…え。』
突然かけられた言葉に激しく動揺する。
図星だとかそういう訳ではないけれど。




「何回か怖がらせちゃったことあったでしょ。」
少し悲しそうな声が聞こえる。たぶん初めてあった日のこととか、合コンで会った男の子に襲われた時のことを言っているのだろう。
やっぱり気にしていたんだ。




『あれは…私が失礼だっただけです。』
実際そうだ。キヨさんは私を気遣っての行動をしただけなのに、私が勝手に元彼や襲ってきた男性と重ねてしまっていただけなのだ。




「うっしーからAちゃんの過去のこととか少し聞いてさ」
ごめんこんな時に嫌な話して。と付け加えて話を進めるキヨさん。
兄はキヨさんに私のことを話していたのか。




「それからずっと、Aちゃんを傷つけないように怖がらせないようにって思ってきた。なるべく近寄らないようにとかさ、深入りしないようにとか。」
そんな気を遣わせていたんだ…。話を聞きながら申し訳なさが募る。




「でもこういう時とか、ほっとけない…とか言ったらなんか上からみてぇだな…。何かしたいと思ってしまうとこあって」



「倒れてからもすげぇ心配で、こうやって頻繁に女の子の家お邪魔しちゃってるし」




「怖がらせてないかなってさ。」
申し訳なさを募らせていた私と同じように、声に申し訳なさを募らせているキヨさん。



何度か反射的に怖いと感じたことはあったけど
キヨさん自身を怖いと思ったことなんてない。




『そんなことないです。わたし、キヨさんが好きです。』




「…………えっ。」
『…えっ。』

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