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178.(side T.O) ページ31

「…ごめん。ちょっとトイレ行って来るな?」



逃げるように立ち上がる。

はぁい、と緩い返事の彼女を横目にトイレに駆け込んだ。



…ヤバかった。あのまま飲んでたら絶対ヤバかった。途中でペース落としてほんまに良かった。

これ、俺誘われてへん?

少なくとも簡単にお持ち帰り出来る状況なのは間違いない。

堪えた自分を褒めてあげたいと真剣に思うわ。


それと同時に浮かんだAの顔。

危うく流されそうになってしまった事に小さな罪悪感が生まれる。

ごめん、と心の中で謝っておく。


さっきは酔うてると思ってたけど、覗き込んだ鏡の中の俺は案外冷静な顔しとるし、もう大丈夫。

それにAの顔思い出したらAに電話掛けようとしていた事を思い出した。

声も聞きたくなってくる。

バシャバシャと顔を洗って、邪念を振り払う。

もうはよ帰ろう。

帰ってAに電話しよう。



席に戻って彼女にそろそろ帰るわ、と声を掛ける。

それやのに、じゃあ私も、と立ち上った彼女が予想外にもよろめいた。

慌てて手を伸ばす。



「…大丈夫?」

「ごめんなさい。浮かれて、ちょっと飲み過ぎちゃった…」

「…ほんま?帰れる?」

「はい…」



フラフラとおぼつかない足取り。必死に俺を掴む手の力も思ってるより強い。

あんまり大丈夫そうには見えへん。

結構飲んでたもんな。

酔うてるフリには見えへんし、これはこれでやってもうたなと思いながらも、一旦椅子に彼女を座らせた。



「とりあえずタクシー呼ぶわ…家どこ?」

「あの、本当に大丈夫です」

「誘ったの俺やし、こんなフラフラなとこ放って帰ったら寝覚めが悪いわ」



俺の言葉に彼女は申し訳なさそうな顔をして、小さく謝った後、ポツリと家の場所を呟いた。

なんの偶然かそれは同じ方向で。

タクシーに乗せるまでと思ったけどそれなら一緒に帰った方が早いやろ。


ごめん、送るだけやから。

もう一度心の中でAに謝って。フラフラな彼女を支えながら、歩く。

到着したタクシーに押し込んで、俺も隣に乗り込んだ。


マンションに着くと、彼女は大丈夫です、と一旦は1人でタクシーを降りたんやけど。

あんまりにも危なっかしいから、部屋まで彼女を送り届けてから俺もようやく帰路についた。


あぁ、なんか…どっと疲れてもうた──。


待たせていたタクシーの中、そっと目を閉じた。

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作者名:咲菜 | 作成日時:2022年8月16日 20時

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