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『ジン…さん…』
流石にAも青ざめた表情だ
「A…、お前は俺の兎だ」
そう言って唇にキスを落とした
『…!!』
Aはどうすることもできず
目を閉じた
長い髪がAの肌にまとわりつき
煙草の匂いが鼻を掠める
キスはどんどん下へと向かい
胸元まで来た
『…っ』
ジンはAの声が聞こえて
顔を上げた
そこにはいつも笑いかけていた
Aの姿はなく
声を押し殺して泣いている
女がいるだけだった
(なん…だ…)
基本的に女の涙は唆るものだと
ずっと思っていた
Aの涙はどの女の涙よりも
美しいものに変わりはない
それなのに…
(なんだ…これは…)
まるで拳銃で頭と胸を撃ち抜かれたような
衝撃と痛みが走ったのだ
Aを押さえつけていた手は
いつの間にか力が抜けて
ジンはAの上から降り
煙草に火をつけた
今まで自分が手を出した女たちは
喜んで自分の身を差し出してきた
ジンは基本的にモテるのだ
だが、Aは違う
ジンを心から受け入れようと
していないのだ
やるせない気持ちで
泣き続けるAを見下ろした
毎日、出会ったあの日から
欲しくて欲しくて堪らなかった女が
目の前のベッドで泣いてる
手を伸ばせば手に入るようで
自分のものにはならない
こんなことが嘗てあっただろうか…
もどかしさでいっぱいになったジンは
Aに脱がせた服を投げつけた
Aはビクっとして
目を開きジンを見た
「服を着てここから出て行け…」
Aは泣きながら目を見開いたが
急いで服を着て
そのままドアの方へと歩いて行く
そして
ドアの閉まる音が聞こえた
ジンはそのままベッドに座り込んだ
何故自分が無理矢理にでも
自分のものにしなかったのか
わからなかった
ただ、自分を見たAの目が
不安と恐怖に染まり
泣いている姿が頭に焼き付いて
離れなくなっていた
「チッ…」
舌打ちをして、煙草を灰皿に押し付け
服を着る
ジンはそのまま部屋を後にし
車を走らせた
ポルシェの中はAが忘れていった
メロンパンの匂いでいっぱいだった
この感情が恋であることに
間違えはないのだが
ジンはAの心を欲していることに
今はまだ気づかない
車のミラーに映るジンの表情は
言葉に出来ないほど
切ない顔をしていたのだった
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あい(プロフ) - あいうえおさん» コメありがとうございます!ご指摘頂きましたが、おっしゃる通り時間も経っておりますので、このままで行きます。すみません! (2019年4月27日 10時) (レス) id: d8d396b9c0 (このIDを非表示/違反報告)
あいうえお - あの、降谷さんはいつもは「俺」と言っていますよ。安室さんのときは「僕」ですが、、直してほしいわけじゃないんですけど、大変だと思うので、、 (2019年4月27日 7時) (レス) id: d4ea0d195c (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - RURUさん» お久しぶりです!いつもご覧頂きありがとうございます^ ^ 漸く更新できました!ジンさんがだんだんと怖い人になってますね…!さぁどんなことが起こるのか…、明日のお話をお楽しみ… (2018年10月8日 23時) (レス) id: d8d396b9c0 (このIDを非表示/違反報告)
RURU(プロフ) - お久しぶりです!更新楽しみに待ってました!この後2人がどうなるかとてもハラハラしてます!ジンはただでさえ今は情緒不安定なのにあんなの見ちゃったらこの間よりもっと恐ろしい事になってしまうんじゃ…明日の更新待ってます! (2018年10月8日 21時) (レス) id: b7492cc28b (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - RURUさん» ジンはキスマークを見て何を思っているのでしょう…?ちょっと不安ですね…。どうなるのか、明日わかります!いつも応援ありがとうございます!頑張ります! (2018年9月24日 17時) (レス) id: d8d396b9c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:i | 作成日時:2018年9月17日 15時