誰でしょう？�� ページ7
その日の夜。
ピアスを返しに来たあの子、毎日顔を見せる切島、他のクラスメイト。こんなに大きな善意に俺は「ありがとう」ひとつ返せない。俺はクソ人間だ。
そのうちだんだんとお見舞いの数も減ってきて、見放されて、俺は独りになるのだろう。誰も俺を愛さない。そんなの耐えきれなかった。
ならいっそ自分からいなくなってしまおうか。点滴の針を引っこ抜き、気づけば病室を出ていた。あれから変わらず調子のいい個性を駆使して、誰にも気付かれないで廊下を渡る。
俺は病院を抜け出した。春の夜の風はまだ冷たくて、患者衣だけだと少し肌寒い。だけどそのまま、俺は走った。走らなければどうにもならないと思った。
数十分もしないで病院の裏のもっと裏の山深いところまで来た。どんなに息が切れても、悲しくても、辛くても、この白い瞳からは涙が出なかった。まだ限界は遠い。
「カハッ、ｵｴ」
突然、俺は何かぬるくてヤな匂いの液体を吐いた。ゲロ吐くほど走ってないし、味も別物だ。とめどなく溢れるそれの味はよく知ってるものだった。最悪な味わいと浮遊感。
しばらくすると、辺りの様子はすっかり変わっていた。山の中にいたはずなのになんだか磯臭い。本当にあの泥ワープをしたっていうのか？じゃあ死柄木さんが…！
「ああ！彩人君！！久しぶり！！！」
「…！？」
確かに、そこに死柄木さんが立っていた。真っ白い髪とボロボロな体。顔にはキショい手をつけてる。そして俺を見ていない。
これは違う。死柄木さんはこんな風に俺を呼ばない。死柄木さんの形をしたナニカがいる。敵意は無さそうだけど、俺はコイツが嫌いになった。
「誰だよ。その声で俺を呼ぶな。」
「バレちゃったか、でも大丈夫！僕は弔の想いを何より尊重してる！！それに、僕も君のことが好きだしね」
神野で一瞬聞いた声。オールフォーワンだ。死柄木さんの中にいる。本物の死柄木さんはどこいったんだ。会って謝りたいのに！コイツが邪魔してくる。
「君が弔を誑かしてるのは知ってたが、これほどまでとはね。弔の感情は相当だよ。それはもう照れちゃうくらいに。今もね、僕の中で怒鳴ってるよ「アヤトくんと話しをさせろ」ってね」
死柄木さん、怒ってないのか。そっか良かった、ホント良かった。俺は死柄木さんを見てる。死柄木さんも俺を見てる。あとはお前が消えるだけなんだよ。
「…返せ、死柄木さんを返せよ！！」
「返せ？とんでもない、返るのは君だよ彩人君」
「は？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 275人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鞘駄(プロフ) - えとちゃんさん» コメントありがとうございます！そう言ってもらえて嬉しいです。頑張ります！！ (9月9日 19時) (
レス) id: d21a21d4c8 (このIDを非表示/違反報告)
えとちゃん(プロフ) - めちゃ好きです…‼︎‼︎更新楽しみにしています！ (9月9日 19時) (レス) @page21 id: e4851da3c5 (このIDを非表示/違反報告)
鞘駄(プロフ) - 蘭さん» コメントありがとうございます！出来るだけ重くならないように努めていますが難しいです…。更なるポップを目指します！ (8月4日 23時) (レス) id: d21a21d4c8 (このIDを非表示/違反報告)
蘭 - うわぁ色々と凄い辛いけどどタイプです、 (8月4日 20時) (レス) @page13 id: b34786daa2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：鞘駄 | 作成日時：2024年6月9日 9時
