笑顔�� ページ35
目に涙をいっぱい溜めて、溢れないように大きく見開く。アヤトくんはそうやって泣かないようにするのが癖だ。今日は涙がないから乾いた瞳がよく見える。
「俺のせいだ…。死柄木さん逃げようよ…」
アヤトくんは俺を抱き起こそうとするが、2人とももう動ける状態ではない。アヤトくんの個性で隠れたとしても限度がある。
俺は彼の手を取った。もうボロボロだから崩壊の個性も使えない。使えたらこんな瓦礫すぐに無くしてあげれるのに。
「約束守れなくてごめん」
「はは、手ぇ冷た」
よかった。笑ってくれた。こんな簡単なことだったんだ。俺は壊すことなんかしなくても君を泣き止ませれたんだ。なんだよ、そうだったのかよ。
アヤトくんの手は温かい。振り払えないくらい強い力で握ってくれている。俺の手を温めるように、俺がいることを確かめるように、しっかりと。
「眠い」
「それ死ぬやつじゃん」
アヤトくんは困ったように笑った。とても綺麗な笑顔だ。連合の奴らも、雄英のガキ共も、誰も見たことないような美しい微笑みだ。俺だけに見せてくれるヤツ。
「そのうち助けが来て空を拝めるよ。」
「あんた殺されるよ？」
「確かに。」
恐怖はない。そのうち死ぬことなんて知ってたし。アヤトくんを置いていくのは結構やだけど、心中はもっと嫌。俺がいなくてもアヤトくんは楽しく生きていける。
「ヒーロー好きになった？」
「俺の友達はヒーローだけど、全部が好きなわけじゃない」
「ヴィランは？」
「あんたが好きだ。連合の奴らも。」
「…じゃあ自分は？」
アヤトくんは少し意外そうな顔で悩むそぶりをした。一年前なら全部大嫌いって答えた君に今は好きなものがある。でもアヤトくんは誰よりも自分勝手なのに自分のことを考えない。
アヤトくんは自分を嘲るように目を伏せて笑った。
「ずっと嫌いだった」
「そっか」
「きっとこの先も好きになることはない」
アヤトくんの中心に空いた穴は埋めようにも埋められない。俺は穴を小さくすることしかできない。最後に塞ぐのはアヤトくん自身だから。
「でも前よりマシになったんだよ。
死柄木さんに会えて良かった。」
「…良かった。」
真っ直ぐな瞳だ。全部を見透かすような、綺麗な瞳だ。黒でも白でもどっちも好きだ。君が見つめてくれるから、全部好きだ。
「アヤトくんが好きだよ」
「知ってる」
もう眠い。あったかくて眠い。
彼が笑ったのを見た俺はゆっくり意識を手放した。
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鞘駄(プロフ) - えとちゃんさん» コメントありがとうございます！そう言ってもらえて嬉しいです。頑張ります！！ (9月9日 19時) (
レス) id: d21a21d4c8 (このIDを非表示/違反報告)
えとちゃん(プロフ) - めちゃ好きです…‼︎‼︎更新楽しみにしています！ (9月9日 19時) (レス) @page21 id: e4851da3c5 (このIDを非表示/違反報告)
鞘駄(プロフ) - 蘭さん» コメントありがとうございます！出来るだけ重くならないように努めていますが難しいです…。更なるポップを目指します！ (8月4日 23時) (レス) id: d21a21d4c8 (このIDを非表示/違反報告)
蘭 - うわぁ色々と凄い辛いけどどタイプです、 (8月4日 20時) (レス) @page13 id: b34786daa2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鞘駄 | 作成日時：2024年6月9日 9時
