雄英脱出【死柄木弔】 (ページ38)

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トモページ38

2人を手中に落としてからは早かった。期末までの2週間、放課後は黒霧に迎えにきてもらってバーに集まる。ヒミちゃんと勉強して、実践の練習をする。ダビさんは大体見てるだけだったけどたまにアドバイスをくれた。

ヒミちゃんは気配を消すのが上手。目を離すと居場所が全然分からない。これを俺のモノにできたらどんなに素敵だろう。ヒミちゃんにあれこれ教えてもらって、帰ったら親にはクラスメイトと勉強してたって嘘をつく。

だんだんヒミちゃんの言う「人の殺し方」が分かってきて、彼女も簡単な数学問題なら解けるようになった。死柄木さんはずっとバーに顔を出さなかった。

それでも俺にとっては今までに無いくらい楽しいテスト期間で、クラスメイトといるより素を出せた。この人たちは本当に敵なのか分からないほど俺にとって良い存在だった。

「アヤトくんと遊ぶのはとっても楽しいです」

　「なら本気で刺しにくるのやめてよね」

「ムリなお願いです！」

明日は期末テスト。怪我とかしたくないのにヒミちゃんは容赦ない。ダビさんもたまに燃やしてくるから命が幾つあっても足りない。

「私ホントはアヤトくんが学校辞めればいいと思ってます」

　「ムリなお願いだね」

「テストで赤点とりまくって退学になればいいんです！そしたらずっと一緒だよ！？」

　「やだー」

「荼毘くん！アヤトくんがずっとテキトーですぅ」

「しょうがねーよコイツだもん。」

騒ぐ俺たちを気にも止めずグラスを磨く黒霧は手を止めて冷蔵庫を開ける。紙製の白い箱を取り出した。たぶんケーキじゃん。普通は知らないふりをするところだけど、俺たちに遠慮はない。カウンターに群がる。

「それケーキですよね！？赤いやつがいいです！」

　「俺このいっぱい乗ってるやつ」

「コーヒーもくれ」

黒霧は呆れたようにため息をついて俺たちが指したケーキを皿に移した。ついでにお湯を沸かしてコーヒーと紅茶を淹れてくれた。

「色取くんが明日テストだから買ってきたんですよ。」

「でも人数分ありますよ！！」

「あなた達が我儘言うと思ったからです！」

淹れたての紅茶に初めて食うタルトというお菓子。俺の為に買われた代物。紅茶はペットボトルで飲んだやつとは全然違った。ヒミちゃんが選んだベリーのケーキにダビさんが飲むコーヒー。

どう表現したら良いかわかんないけど、悪くなかった。

「明日頑張れよ」
「そうですよ！せっかく教えたんですから！」

俺の前に座る2人の目は俺を見てた。