雄英脱出【死柄木弔】 (ページ36)

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好きなもの会談ページ36

「人は殺さなくていいんだよ。」

「でも！ヒーロー科の実技なら戦うってことですよね！！」

セーラー服ことトガヒミコは机から身を乗り出して言った。教科書が見えない。ガタリと音をたてて立ち上がったトガは俺に熱く語りかける。

「私、アヤトくんがとっても素敵な人だと思うのです！！だって弔くんが好きだから、ああやって刺そうとしたんでしょ？私もそうなの！好きだからボロボロにしたい。アヤトくんならわかるでしょ！」

トガの笑顔はどんどん歪んでいく。こんなやつのこと分かりたくない。俺は一緒じゃない。コイツの性癖を気持ち悪いとさえ感じた。

　「何言ってんだ。俺が死柄木さんを刺そうとするのはお前みたいな理由じゃない。勉強の邪魔だからどいてよ。」

「でもでも！人を好きになるってコトは一緒でしょ！？教えてよ、アヤトくんのこと！」

トガはまったく引かない。これでは何もできないと思って渋々承諾しバーから出て人気のないビルの裏に来た。路地裏には不安がたくさん詰まっていた。

おもむろにトガは語り出す。

「私は血が好き。アヤトくんは何が好き？」

　「…わかんない。」

「じゃあ何が嫌いですか？」

　「…わかんない。」

本当のことだった。全部がわからない。自分が何をしたいのかがごちゃごちゃで。心が酷く濁っていて何も見えない。

「いっぱいあり過ぎて迷ってるんですよね？」

トガの言葉は絡まった俺の思考を解きほぐそうとしていた。どうせ何にも解決しない。そう思って彼女に委ねてみた。

　「…そうかも。俺、学校は割と好きだ。でもヒーローは嫌いだし。死柄木さんは好きだけど、敵は…好きか嫌いかなら嫌い。」

トガは軽蔑するでも賞賛するでもなくただ頷いた。

「面白いですねぇ！それがアヤトくんなのです。」

　「そんなんでいいんかね」

ビルの壁に寄りかかる。そうするとトガは隣にやってきてしゃがんだ。

「知らないです。そんなことよりアヤトくんは弔くんが好きなんですよね？？」

　「そうかもね」

「恋バナしましょうよ！！」

　「別に恋じゃないよ。ただ好きなだけ。」

「じゃあ好きなことについてお話ししましょ！！」

死柄木さんが好きな理由、キッカケに思い出。血が好きな理由に今までに殺した人たち。俺たちは自分の世界を語り尽くした。お互い否定も肯定もせず共感すれば頷き合った。

トガの思惑どおり、俺はトガと馬があった。つまり、悔しいけど、癪だけど、最悪だけど…

結構仲良くなった。