雄英脱出【死柄木弔】 (ページ13)

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ガチ泣きページ13

俺はいつも悪態ばっかついてるけど、暗い気持ちは嫌いだ。ふだん明るい気持ちになることは少ないけど。

このまま何もしなければ死柄木さんに「サヨウナラ」が言えなかったこと、大嫌いなヒーローに会ってしまったこと。そんなモヤモヤがずっと残りそうな気がした。

ブレザーは羽織らないで、ネクタイもぐちゃぐちゃなまま更衣室を飛び出した。A組の教室からはまだ暖かな光が付いていて耳をすませば笑い声なんかも聞こえた。

扉を開けようと手を掛けるが何故だか途端に緊張してきた。頭が冷たく痛んでいくような感覚。何を怖がってる。原因不明の恐怖はどこから来るのか。

　「ヒーローは…嫌いだ…」

上げかけた左手をドアから離した。この教室は俺には眩しすぎる。小さなため息と共にドアから離れる。暗い廊下は俺にピッタリの背景だった。

　「帰ろ。」

何やってるんだろう俺は。勝手に気分落として、勝手に慰められようと期待して。俺なんかにそんな優しい人間がつい来るはずない。俺は俺が嫌いだ。

暗くて先の見えない廊下の奥へ行く。非常階段の扉の上を照らす緑の人工的な光は不気味で、早く帰らなくてはいけないというプレッシャーも相まって自然と速歩になる。

切「じゃー！！俺帰るわー！」

　「っ！？」

廊下の静けさを打ち破った馬鹿でかい声と扉を乱暴に開ける音。背後で起こった予想外の出来事に足が止まった。

切「あ！？彩人！！起きたのか！！？」

単語の一つ一つに「！」を付けるこいつはやはり拍子抜けすると言うか何というか。

切「俺今保健室寄ろうと思ってたんよ！！これお前のカバンな」

投げ渡されたのはほとんど何も入っていないリュックサック。パンパンになってる切島のものと比べると随分貧相だ。

　「…。」

切「まだ痛むのか？俺が助けてやればこんなことには…！」

　「俺が悪いんだよ。」

なんでだよ。忘れ物届けたり、他人の心配したり。気持ち悪い。こんな大きな善意に「ありがとう」の一つも言えない俺になんで構うんだよ。お前は。

切「はあ？？？お前はなーんも悪くねえよ！！」

　「は、」

切「あの時倒れたのは多分個性使って先生助けてたからだろ？」

なんて罪悪感。俺は個性を人のために使ってない。この考えは綺麗すぎる。あの時の高揚は。死柄木さんに見惚れたあれは、きっと間違ったことなんだ。

今日は個性を使いすぎたせいか、涙腺が緩い。

切「えっ！！？泣くなよ〜！！」

　「…泣いてない。個性の影響」