泡沫ノ白娘 /br ページ8
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「ぶるーく〜、もう昼だけど？」
ぎぃ、ぎぃ。木が軋む音と連動して揺りかごの如く、右へ左へと揺れる。柔らかな日差しは生命を受け入れる聖母のように暖かい。潮風がゆるり、と尾を巻いた猫みたいにきままに頬を撫でては戻りを繰り返す。
眠気を誘う船腹に、のんびりと目を細める。
「もうこんな時間かぁ。僕も働かないと」
「はいはい。今日は出発の日だから、力仕事は任せたよ」
頭と同じぐらいの大きさの三角帽子をぎこちなく被るなかむが、起こしに来てくれたようだ。年季の入ったように見えるそのトライコーンだけれど、解れ一つ見当たらない辺り几帳面さが伺える。僕には無理だなぁ。
「ぶるーく、やっと起きたの？」
「あっはは、寝ちゃってたみたいだわ」
「まぁいつものことだろ」
「それより今日は出港の日だよ！天候が変わる前に早く海に出よう」
チャリ、と金属音が鳴った。それぞれのイメージカラーで着色した羽毛が束ねられているストラップだ。これが、我々白尾海賊団である印。僕たちにしかない、世界でたった六つの。
「それじゃ、出発進行！」
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先程の穏やかな波が嘘だったかのように海が荒れ狂う。まるで生きているかのように白波が膨れ立ち、噛み付くように船体をひっくり返す。シャークんの読みが外れたことは無かった。今日だって、一番ベストだと言って出港してきたのだ。
「……っ、broooock！！！！」
「きり、やん……」
備え付けておいた小舟に乗った五人が遠のいていく。荒波の中必死に手を伸ばしたきりやんが、波浪に飲み込まれて。いや、飲み込まれているのは僕なのかな？
とめどなく口の中に塩っ辛い海水が入り込んできて、そこで。
意識は途切れた。
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作者名：りつ | 作成日時：2022年5月16日 18時
