三角形。【Ryosuke × Kei】

５ ページ5

.







.







.







情事後。







.







.







後処理だけを済ませると、

いつも１人で帰ってしまう涼介。







.







.







私たちに、会話なんてない。







.







.







『ひっく………ふっ…、』







.








毎回、制御できずに溢れてくる涙。







.







.







生理的なものなのか、

感情的なものなのかなんて分からない。







.







.







涼介のぬくもりが残るこの空間に耐えられず、

重たい手つきで制服を着て、屋上へ向かう。







.







.







.







『はぁ…。』







.







.







大げさに深呼吸して、屋上への重い扉を開ける。







.







放課後だから人もいなくて、







落ち込んだ日にはよく来ている。







.







すごく寒いけれど、

そのスッとした寒さに心が洗われるような。







.







.







『きもちいーな…』







.







誰もいないだろうと、独り言を呟く。







.







.







「んねー。」







.







下から返ってきた言葉。







.







『えっ！？』







.







.







びっくりして声の方を見ると、バッグを枕にして

寝そべりながら、眩しそうに空を見上げる男の子。







.







顔をよく見ると、どこか見覚えがあって。







.







.







『………えっと、』







.







「俺、伊野尾。キミの前の席！」







.







.







よいしょ、と体を起こして座り直す。







.







その少し離れた場所に、私も座る。







.







.







『伊野尾、くん………』







.







つい最近、席替えで私の前の席になった。







.







全く接点がなくて、話したこともなかった。







.







.







慧『Aちゃん、でしょ？』







『あ、う、うん………』







.







いきなり名前で呼ばれて、戸惑ってしまう。







.







.







”よろしくね、”







.







差し出された右手に、控えめに応える。







.







.







優しく握った伊野尾くんの大きな手は、

外にいたからか、ひんやり冷たい。







.

６→←４

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す