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「ねぇA」
奥の音が聞こえなくなる。多分、ゲームかテレビを消したんだと思う。
「ん？」
「オレさ」
何だかいきなり、二宮くんの声が優しくなった。
「色々お前にウソついてんだよね」
「…え？」
ウソ？嘘なんてつかれた覚えないけど…。
電話だから相手の顔も見えなくて、色んな不安が頭に浮かぶ。
「お前がこの大学を志望してることは知ってた」
声は出なかった。
「知っててオレはこの大学を目指した」
「、…」
「いや、厳密に言うとAが目指してるから目指した訳じゃないんだけど」
「…」
「目指してる大学が同じだって知って、オレはここに絶対合格すると誓って必死に勉強した」
…どういうこと？自分から出たその声は、とても小さいものだった。
「Aは、オレのこと知ってくれたのって体育祭ん時？」
「…そう」
また、ンフフと笑う声が聞こえた。
そして、じゃあオレの勝ちだね、と呟いた。
「オレはお前のこと、その前から知ってた」
「…」
廊下の窓でボーっとしてた時。近くに女子のグループが居てさ。その中にAが居たんだけど、聞いてたら聞き覚えのあるゲームの名前ばかり出てくんの。面白そうな子だなと思ってたら、得点係にいたの。体育祭の後から、よく見かけるようになって。
…そりゃそうだ、だって二宮くんのことが見たくて、近くに居たはずだもん。
よく見るうちに、あぁオレ気になってんだなって気づいて。それが1年の最後。学年が変われば一度は同じクラスになるって信じたけど、ん？ンフフ、そう。ならなかった。
二宮くんの声を聞いてると、掠れてくるのが分かった。多分私の声も掠れてるはずで。
「一度しか喋ったことの無いオレを、覚えてくれてるかは分からなかったけど」
「…」
「それでもオレはバカみたいにやって、大学行ったらAが居た。」
Aは、オレのこと覚えてくれてた。
その台詞は、小さかったけれど、どこか力強かった。
「いつも連絡してくる“二宮くん”は、脈アリだよ」
「…え？」
「ゲーム目当てなのもあるけど、Aと話したいのが目当てかな」
「、二宮くん？」
「ある程度の好意がなかったら、って言うチカちゃんはハズレだよ」
「…」
なんでその会話を知ってるんだろう、なんて考えにはなれなかった。
「A、…物凄く好き」
息が交じるように聞こえたその言葉に、私の世界は多分。時を止めた。
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さんご(プロフ) - しおりさん» はじめまして、しおりさん。コメントありがとうございます。そんなこと言って頂けるなんて、もう嬉しい限りです(笑)こちらこそありがとうございます(´ω｀) (2019年9月21日 12時) (
レス) id: e1b1cf4c3f (このIDを非表示/違反報告)
しおり(プロフ) - はじめまして。どのお話も優しくて、心が温かくなりました。さんごさんの丁寧な言葉の紡ぎかた大好きです。多分何度も読みに来ちゃうやつだ(^^)ありがとうございます。 (2019年9月21日 7時) (レス) id: 072c120661 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さんご | 作成日時：2019年8月15日 16時
