第49話 ページ9
「もう、我々敵連合に関わらなくていいんです」
出久に抱き締められたまま、未だどうすることも出来ない私に、黒霧さんがそう告げる。
出久が、私を抱き締める力が強くなる。
「死柄木弔はあの部屋には来ませんから、逃げ出したことがバレることはありません」
出久の涙で、肩がじんわり温かくなる。
「我々のことを口外して頂かなければ、結構ですから」
黒霧さんの声が少し遠くなる。
「椛さん、幸せに暮らしてください」
どんどん、声が遠くなる。
「私は、貴方に笑顔でいてほしいんです…」
ゲートが、閉まる気配がした。
黒霧さんはあのバーに帰ったんだ。
終わったんだ、帰ってきたんだ、元の生活に戻れるんだ。
ゲートが閉ざされた途端、そう悟ってしまった。
そう思うと嬉しくて、それ以上に悲しくて足の力が抜ける。
出久が私の体を支えてくれるのを感じながら、膝から崩れ落ちた。
「椛っ！？」
「うん、大丈夫…」
急激に睡魔に襲われる。
視界が霞む。
「ねえ、椛。僕、君に言わなきゃいけないことが…」
「………うん」
ここで、プツリと意識が途絶えた。
この時、出久が何を言いたかったのか。
どうして敵連合から開放されたのに悲しいのか分からないまま、眠りについた。
⿴⿻⿸⿴⿻⿸
眩しい光が瞼越しに伝わって、目を開ける。
そこに広がるのは三日間で見慣れた灰色の天井。
ではなく、真っ白な天井だった。
違和感を覚えて体を起こすと、目に映る景色が変わっていた。
壁一面や、棚の上に広がるオールマイトのグッズの数々。
雄英の制服の隣には黄色いリュックが並んでいる。
ここは、
「出久の、部屋？」
あれ？何で出久の部屋にいるんだ。
あの灰色の部屋は？
そういえば、昨日の夜に黒霧さんが来てから、それから───、
どうしよう、全然思い出せない。
あまりにも夜が深くて、意識が朦朧としていて、悲しみに襲われて。
それだけで精一杯で何も思い出せない。
カーテンの隙間から差す朝日に眉をひそめながら、床で眠る幼なじみを起こすべく立ち上がった。
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暁稀 - これこそ純愛。YES純愛。黒霧さんイケメン過ぎて禿げました、どうしてくれるんですかありがとうございます！ (2021年8月13日 3時) (
レス) id: 5c3eb28485 (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - 最高すぎます！！ (2019年12月29日 2時) (レス) id: a8dea294c9 (このIDを非表示/違反報告)
budou(プロフ) - やばすぎた。読んでるだけやのに幸せ... (2019年10月13日 7時) (レス) id: bca9c6f33f (このIDを非表示/違反報告)
チイナ(プロフ) - もう号泣でした。涙がぽろぽろ溢れ出てきて、あーいい作品に出会ったなぁ、と感じました。私の大好きな作品に追加です！このような作品をお作りいただきありがとうごさいます！また読み返しに来ます。 (2019年7月15日 8時) (レス) id: f759a37db1 (このIDを非表示/違反報告)
琴(プロフ) - はじめまして。何度も何度も読み返してその度に感動させられて、こんな小説久々に読みました！！また読みに来ます！この作品に巡り合えて幸せです。本当にありがとうございます！ (2019年2月9日 21時) (レス) id: f1af7a443b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：うすしおタルト | 作成日時：2018年8月26日 19時
