35 ページ6
．
｢……そうか。｣
話し終わったあと、私の顔は涙でぐしょぐしょだった。そんな私を見て、少し寂しげに笑って先生はハンカチを差し出してくれた。
『…ごめん、こんな重い話して。』
三年前、と言っても亡くしたのは中学一年生だ。
かなりの母親っ子で、父親との折り合いが悪かった私にとってのそれは、あまりに耐え難い現実だった。
｢いや、それは全然いい。今まで辛かったな。
お前はよく一人で頑張ってきた。｣
そう言って先生は、私の頭を優しく撫でた。
ちら、と顔を盗み見れば、今まで見たことも無い優しい表情をしていて、その顔を見てこれまでの孤独が少し救われた気がした。
『ま、私が泣いて生き返ったりしないし、
しょうがないでしょ。こればっかりは。』
｢それはそうだが、友達と話していて辛いこともたくさんあっただろう？
俺はお前のそういう所を尊敬している。｣
『…は、ちょっとそれは気持ち悪いから止めて』
｢…お前、せっかくこの俺が褒めてるんだぞ。
素直に受け止めろ｣
『いや、うん。それは分かるけど、急に優しくされると気持ち悪いから今まで通りで。』
…やっぱり私は天邪鬼だ。
誰にも話せなかったことをやっと話せて、
感謝してもしきれないくらいだったけれど
それを態度に出すのが恥ずかしくて。
でも、この日から私と伊黒先生の距離は
ぐっと縮まったのだ。
それから私は、ことあるごとに何でも先生に話すようになった。
それこそ実弥先輩の話や、部活の話、
父親と喧嘩してさー。とか、そんなくだらない話を何でも話してしまって。
伊黒先生も何時間でも話に付き合ってくれたから、依存先が欲しかった私はそれに甘えてしまった。
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 368人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
奏海(プロフ) - 環さん» たまちゃんありがとうーっ！キュンキュンして貰えて良かった！ぜひ最終章もお付き合いよろしくね♡ (2021年10月21日 13時) (
レス) id: d291d10447 (このIDを非表示/違反報告)
奏海(プロフ) - ひよさん» ひよさん！コメントありがとうございます♡ずっと放置していたなと思って頑張りました！笑 ぜひ最終章で3人と結ばれてください🥺投票もしてくれてて嬉しい！ありがとう♡ (2021年10月21日 13時) (レス) id: d291d10447 (このIDを非表示/違反報告)
環(プロフ) - かなみちゃん2章おつかれさまとおめでとう！！ずっと待ってました更新ありがとーーーっ！！！めちゃくちゃきゅんきゅんだったよ…！！最終章で3人と結ばれてきます。おつかれさまありがとう！！最終章読んできます🥺 (2021年10月20日 18時) (レス) @page33 id: 940f9d3174 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - 奏海ちゃん第2章お疲れ様でした…!! ここ数日の怒涛更新にハァハァしていた次第です。しかも3人それぞれとの最終章ですと…? 選べない読者へのご褒美ですかありがとうございます!! 待ってる!! （投票済って出るのマジ腹立たしい） (2021年10月20日 7時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
奏海(プロフ) - 環さん» たまちゃんただいまーっ！待っててくれてありがとうッ！！！私もたまちゃんラヴだよ…っ！！！！！ (2021年6月1日 22時) (レス) id: d291d10447 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：奏海
| 作成日時：2021年4月23日 12時
