【募集企画】東方幻想記録物語 3巻

白銀の錬金術師と餓鬼 ページ17

ヴァネッサは先程投げた自分の杖にくし刺し状態にされ、ジタバタともがいている餓鬼の元へゆっくりと、雄弁に語りながら歩み寄る。一歩、また一歩と歩くたびに首がかくり、かくりと傾いていく。

「餓鬼とは通常、仏教の世界観である六道において餓鬼道に生まれた者を指す。餓鬼は常に飢えと乾きに苦しみ、食物を手に取ると火に変わってしまうので決して満たされることがないとされる。阿毘達磨順正理論によると餓鬼には3種の餓鬼がいるといっている。ええと確か…無財餓鬼、少財餓鬼，多財餓鬼、だったかな？加えて正法念処経には三十六種の餓鬼がいると言われており、�身、針口、じき＿＿おっと」

＿＿＿ウォォォォォォン＿＿＿
杖の呪縛から逃れた餓鬼が、驚異的なスピードでヴァネッサに飛び掛かる！が、紙一重で避けられてしまう。そしてくるりと振り向いた餓鬼の瞳に、口元を三日月形に歪めた白銀の錬金術師の姿が映る。

「あぁ、あぁ、あぁ。君は私の知っているどの餓鬼とも違うようだ。いやはや実に、実に興味深い。だから死んでくれ。死んで…私の知識の糧となってくれ！！『私は、君の魂を成仏させる事に成功する』！！」

瞬間、青白い光が天に向かって伸び、ヴァネッサと対峙していた餓鬼はがくりとその場に倒れた。ヴァネッサは満足気にその餓鬼の残骸に触れた後、畔に向き直りスカートを摘まみ、微笑みを浮かべて上品にお辞儀をした。

「お初にお目にかかる。私はヴァネッサ・ミストラル。錬金術師兼医者だ。君のことはパチェから聞いているよ。仲西畔くん？」

取引　畔→←接触　畔

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す