【募集企画】東方幻想記録物語２巻 (ページ35)

今日:3 hit、昨日:1 hit、合計:4,669 hit

駄弁り合い　珠城ページ35

やっぱりやりづらいなこの人。

余り弄られたことがないせいか、将又、彼女が”同じ目”をしているからか。

気まずい？

違うな。ある種、これは同族嫌悪だ。

いがみ合うだなんて時間の無駄は起こさない。こんなことを思っているのが自分だけなら価値観の決裂に終わるだけだ。

昔会ったあの子は、価値観なってなんでもござれな不思議な奴だったが。

閑話休題。

この後の、元の世界に帰る以外の選択肢を言うには西行寺幽々子の口からとかなんとかなので此処に来たのだ。

用件は早く済ませるに尽きる。

「む、だから、揶揄わないでください！後単純じゃないからなこのやろー！」

拗ねたように軽く笑うと同じく軽い調子で「悪い悪い」と返される。

「ところで、仲西さんはここの人ですか？」

「畔でいいぞ。私は幽々子に用があってきただけだ。お前は？」

「んー、俺、外来人というものらしくてですね？元の世界に帰るか、もう一つの選択肢を選ぶか、ってので。その選択肢を聞きに西行寺さん？を探していたとこです」

「…妖夢の説教は始まると長いからな」

確かに、終わりそうもない。今回だけでなく積年の恨みと言った具合か。

「どうせまだ止まんないんだ。ちょっと話してようぜ」

「いいですけど、話すって、何を？」

「何だっていいさ。珠城は、家族いんのか？」

穏やかな笑みで問われ、答えないわけにはいかない。

対して価値のない個人情報だし、悪用なんて、この人はしないだろう。

「父と母が。俺、一人っ子なんですよ」

ま、そんな糞親は死んだけど。

「へー、でもそんな感じだよな。彼女とかは？」

「いませんったら。簡単にできたら苦労なんてしないもんです」

「そうか？お前の顔ならいそうだけどな」

「人を顔だけで判断しないでくださーい」

「俺は単純ですって思いっきり書いてあるぞ？」

「書いてません！」

――こういう平和も、偶には悪くない

甘い思考。

この時の俺は緩みに緩んでいたのだと、後に後悔することになる。

後悔はいつだって後からやってくる。

今はまだ、誰も知ることは無い。