6-3 ページ3
友達の元へ戻っていく甲斐君を横目に、香帆が私に訊く。
「Aって甲斐と仲良かったっけ？」
「いや全然」
私は即答して首を振った。
仲良いどころか、殴りかかる勢いで襟首掴まれたし。
全く以て仲良くない。
「…だよね」
香帆は相槌を打つと、カレー横の牛乳に目をやった。
「それ入れるの？」
「うん。せっかくもらったし」
入れなかったら甲斐君に怒られそうで怖いし、と心の中で付け加える。
「何考えてるんだろあいつ」
香帆は訝しげに甲斐君を方を見る。
「いつもは授業だりぃーとかねみぃーとか腹減ったーとか、考えてることだだ漏れなのに」
そんなことをそこそこ大きめのボリュームで話す香帆にはらはらした。
もし今の発言が甲斐君の耳に入ったら怒り出すんじゃ…
案の定、
「おい聞こえてんぞ！」
甲斐君の怒号が飛んできた。
ひぇ、と首を竦める私の横で、香帆は怯むどころが「ほんとのことでしょー？」と楽しそうに笑っている。
笑いながら、香帆は私の方を見る。
「そんな甲斐のこと怖がんなくてもいいと思うよ…って、それはちょっと難しいかもしれないけど」
香帆の視線が、私の足首に注がれる。
靴下で隠れていて見えないけど、そこには湿布が貼られている。
「うん…頑張ってみる」
私は曖昧に笑って、けれど甲斐君の方を極力見ないように、カレーに視線を落とした。
牛乳パックを開けて、少しだけ入れて混ぜてみる。
「…おお」
思わず感嘆の声が上がった。
カレーの辛さが弱まって、程よくマイルドになっている。
甲斐君に感謝だ。
「どう？」
「うん、いい感じ」
香帆の言う通り、甲斐君は思ったより怖くないのかもしれない。
…でも。
「ねえA」
さくらにちょんちょんと肩をつつかれた。
振り返ると、さくらは心配そうな目で私を見ている。
「甲斐君、ずっとAのこと見てない？」
「……」
本当は私も、薄々感じてはいたんだ。
今日は、やたらと甲斐君の視線を感じる。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 296人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
理音(プロフ) - 続き気になります！更新楽しみにしています！応援してます！！ (2022年8月16日 0時) (
レス) id: d2e2ccbd11 (このIDを非表示/違反報告)
7star(プロフ) - 初めまして！読み進めるほどドキドキして胸がギュッと締め付けられます。作者様のペースで更新されるのを楽しみに待ってます！ (2020年7月15日 21時) (レス) id: f3e580ba40 (このIDを非表示/違反報告)
まろん(プロフ) - 読んでて切なくてきゅんきゅんしてます！何度も何度も読み返してます！更新楽しみにしています！頑張って下さい、応援しています！ (2019年6月2日 14時) (レス) id: 2af5865e58 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さな×りお | 作成日時：2019年5月11日 0時
