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誰かの声がする。
目が覚めた瞬間にそう思った。
寝起きのぼんやりした頭で思考を巡らす。
そうだ。ここは学校で、私は美術準備室に先生といる。
でも聞こえた来たのは先生の声じゃなかった。
視線を上げると、先生はもう起きていて、パソコンの画面を見つめていた。
そこに映っていたのは、
【俺と付き合ってくれないか？】
他人の告白、
【…ごめん】
そして失恋の現場だった。
謝ったのは景山さんだ。
相手の方は、柱に遮られて姿は見えない。
でも私はその声を、どこかで聞いたような気がした。
これは、なんだろう。
景山さんのドキュメンタリーを撮ると言ってた相澤君のビデオだろうか。
こんなのまで撮ってるんだ。
辛いんだよな。
私にとって失恋は他人事じゃなかった。
流れる映像を見ながら、名前も顔も分からないその男の子のことを思った。
ふられるのってやっぱ、きついんだよな。
付き合えるか付き合えないか白黒つく分、
断られると世界が暗転したような気分になる。
でもきっと、ふる方も楽じゃないんだろうな。
画面の中で「ごめん」と謝った景山さんは、ほんとに申し訳なさそうな顔をしていた。
きっと相手の想いに真摯に向き合っているんだろうなと思った。
先生に声を掛けようか、起き上がろうかと迷っていると、先生は椅子から立ち上がった。
突然のことにびっくりして、目を閉じ寝たふりをしてしまう。
ガチャ、と先生が扉を閉めて去っていくのが分かった。
目を開けて身体を起こす。
起こした時に頭がくらくらして、視界が少しふらついた。
時計を見ると、もう午後になっていた。
変な時間に起きて二度寝しちゃったからかな。随分沢山眠ってしまった。
起こしてくれればよかったのに。
多分、怪我人に無理させないようにとか安静にさせようとか配慮してくれたんだと思うけど。
机の方を見る。
パソコンの画面はブラックアウトしていた。
パソコンの後ろ、ぐるっと半周を囲むように、沢山のモニターが置かれている。
昇降口、廊下、階段、色んな所が映し出されている。
どこかの管理室に迷い込んでしまった気分だ。
どこまでも、非日常の光景だった。
このモニターは、警察の侵入を想定したものだ。
先生がやっていることは犯罪なのだと思い知らされる。
そして私は、その先生に命を握られている立場なんだ。
身体を倒して毛布にくるまる。
毛布のあたたかさに身を委ねる。
大丈夫。
私は、先生を信じてる。
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さな×りお(プロフ) - 雨傘 空さん» 勿体ないお言葉…！ありがとうございます!!とっても励みになります！ (2019年4月13日 12時) (
レス) id: e17c1230c5 (このIDを非表示/違反報告)
雨傘 空(プロフ) - 文章表現がとても好きです……！いつも更新たのしみにしています。作者さんの無理のないペースで、これからも応援しています！ (2019年4月13日 8時) (レス) id: 04590a81f1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さな×りお | 作成日時：2019年4月7日 13時
