3-2 柊side ページ27
蒼井が寝息を立て始めたのを確認して、目を開けた。
音を立てないようにそっと上半身を起こす。
枕にしていた右腕が鈍く痺れていた。
蒼井が起きる気配がして、目は覚めていた。
人の気配には敏い方で、夜家族が家の中を動く度に目が覚めてしまっていたものだ。
蒼井はもう一度寝ようとしているはずだから、今俺が起き上がってもしょうがないだろう。
目を閉じて、寝たふりを決め込んでいた。
すると左手に、蒼井の手が触れてきた。
触れられた左手を見つめる。
子供が悪戯をする時のような、たどたどしい手つきだった。
思わず笑ってしまいそうなほど、真っ直ぐで、純粋なやつだ、蒼井は。
その真っ直ぐさを思うと胸が苦しくなった。
蒼井の毛布がずれていたので掛け直してやる。
湿布の貼られた足首が目に入った。
あの時。
甲斐達に襲われ、蒼井が助けてくれた時。
蒼井に話し掛けようと、せめてお礼くらい言わなければと口を開こうとした。
でも、蒼井を睨む甲斐を見てやめた。
蒼井に必要以上に接触すれば、共犯だと疑われかねない。
だから蒼井の横を何も言わずに通り過ぎた。
申し訳なさがちくちくと背中を刺した。
でも現に、蒼井は共犯だと疑われ、責められ、
怪我までする羽目になってしまった。
俺を庇ったせいで。
自分への言い様のない怒りに、胸が痛む。
軽く呻きながら、蒼井は寝返りを打った。
その無防備な姿に、安らかな寝顔に心が疼いた。
思わず伸ばしかけた手を、固く握り込む。
擦り切れる程繰り返してきた言葉を、もう一度自分の中で再生した。
俺は教師だ。
それに…
タイミングを見計らったように、腰を激痛が襲う。
薬が入った瓶を手に取る。
�爐瓦瓩鵑覆気き�
痛みに眩む意識の中、あの日の蒼井の声が響く。
�猖榲�にごめんなさい。忘れて下さい。
だから、��
あの時蒼井は、確かに怯えていた。
自分が投げた不用意な発言を悔やんだ。
それを言えば蒼井は傷つくと、知っていたはずなのに。
手の中の瓶に視線を落とす。
目を閉じる。
ごめんな蒼井。
俺はお前を、幸せにしてやれない。
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さな×りお(プロフ) - 雨傘 空さん» 勿体ないお言葉…！ありがとうございます!!とっても励みになります！ (2019年4月13日 12時) (
レス) id: e17c1230c5 (このIDを非表示/違反報告)
雨傘 空(プロフ) - 文章表現がとても好きです……！いつも更新たのしみにしています。作者さんの無理のないペースで、これからも応援しています！ (2019年4月13日 8時) (レス) id: 04590a81f1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さな×りお | 作成日時：2019年4月7日 13時
