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「あ、蒼井さん」
資料を片手に、森崎先生が駆け足でやってきた。
「ごめんね遅くなって」
じゃあ入って、と進路指導室のドアを開ける。
「それでね」
2人して座った後、森崎先生は「前に言った通り、進路についてなんだけど」と資料を開いてみせた。目立たない程度に、薄ピンクのネイルがしてある。服もお洒落だし、スカーフも毎日違うものを付けて来ている。
先生好きな人いるのかな、いそうだな、とぼんやり思った。
「昨日書いてもらった進路調査票、第1志望の大学、南澤大の建築学科に変えてたでしょ。蒼井さんの成績なら、最初に提出してくれた山城大でも、合格できると思うんだけど…」
「山城大の建築学科は試験科目にデッサンがあるって、あとで分かって。私絵が苦手で」
「それなら」
森崎先生は、ぱっと明るい表情になった。
それを見て、志望を変えた理由についてある程度の目処はついてたんだろうな、と察する。
「美術の柊先生に見てもらったらいいんじゃない? 聞いておこうか」
「お願いします」
南澤大にそこまでこだわりはなかったし、行けるなら偏差値の高い山城大に行きたかったから、素直にお願いした。
柊先生とは面識がなかった。たまに廊下で見かける程度で、顔もぼんやりとしか覚えていない。
私は柊先生について知っていることといえば、美術教師であること。生徒からブッキーと呼ばれていること。そして、雑魚キャラと影で笑われていることくらいだった。
廊下で足を引っかけられたり、どつかれたり、ちまちました嫌がらせを受けているのを何度か見たことがある。
そういった場面に出くわした時、私は見て見ぬ振りをしていた。
言葉を選ばずに言えば、それはありふれた光景だった。小学校でも中学校でも、似たようなことはあった。だから、この人はそういうタイプの先生か、と判断するだけだった。
数日後、柊先生からOKが出て、私は毎週火曜日、先生の指導を受けることになった。
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さな×りお(プロフ) - かなとさん» 指摘していただきありがとうございます。訂正いたしました。 (2019年4月1日 18時) (レス) id: e17c1230c5 (このIDを非表示/違反報告)
かなと - 編集画面をよく読みオリジナルフラグをお外し下さい違反です (2019年4月1日 16時) (レス) id: 977ff24faa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さな×りお | 作成日時:2019年4月1日 15時