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刹那の幸★ ページ22

この感情は酷く醜い。
まるで長雨の後の泥土のようだ。

ドロドロとしていて、足取りを重くして、もがけばもがくほど身動きが取れなくなる。


飲み込まれる前に、何か手を打つべきか。
そうでもしないと私が焦燥感で誓いを破ってしまいかねない。


「石田様、大丈夫ですか?少しお休みになられた方が宜しいのでは?」


私を心配そうに見つめるA。


「……ああ」


あの日以来、もしかして私のことを嫌いになったのではと恐れていたが、どうやらその心配は無さそうだ。

いつもと変わらない。
変わらず私たちは言葉にこそ出さなくても互いを想い合っている。


「A、久しぶりに二人で話さないか?貴様がいるといないとではだいぶ違う」

「はい。私でよければ」


嬉しそうに承認したA。

私だけではない。
きっとAも私との時間を待ち望んでいたのだろう。

ようやく誰にも邪魔されない。
私の部屋に、Aがいる。
Aの目に私だけが映っている。
秋風で冷えた手を重ね、ひたすら他愛もない話をするだけの時間がとても愛おしい。

醜い泥土だったものが、段々清い水へと変わっていく。


「……A」


直に手に伝わる体温と、骨の感触。

私は数え切れないほど多くの人を殺めてきた。
そしてこれからも、変わらず殺め続けるだろう。
そんな穢れた手を、Aは握り返してくれる。
今なら、密着する皮膚すら愛せる。


早く、この溢れんばかりの感情を全て受け取ってほしい。
願わくば、Aの全てが欲しい。


今は儚い一瞬の時間かもしれない。
だがいずれ、この時間が永劫のものになるように、今は戦わねば。


「A、私を待ち疲れて他の男に走るような真似は決してするな。口説かれても決して心を許すな。貴様にその気が無くとも言い寄って来た男がいたらすぐに言え。……その時は私が貴様を誘惑した達者な口を割いて、色目を使わぬよう眼球を抉り取って、二度と近寄らぬよう四肢を剥いでやる。
誰にも、貴様を穢させはしない」

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三楓(プロフ) - 天智就佐さん» コメントありがとうございます!病んでる三成様を書いているといつも以上にキーボードが捗るので(笑)まだまだ頑張ります(*´∀`*) (2020年4月4日 20時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
天智就佐(プロフ) - 更新頻度が早くて内容が神なんて尊敬します!これからも頑張ってください! (2020年4月4日 17時) (レス) id: b2ae4e5a5c (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - 霧雨ルカさん» コメントありがとうございます(*´∀`*)更新頑張ります! (2020年3月30日 19時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
霧雨ルカ(プロフ) - 三楓さんの小説好きです!これからも頑張ってください!!応援してます! (2020年3月30日 13時) (レス) id: 58200a85c8 (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - 紫月姫さん» コメントありがとうございます!たまには病みかけているところから書きたいなと思いまして...(笑)自分のペースで更新頑張ります!(*´∀`*) (2020年3月28日 21時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:三楓 | 作成日時:2020年3月23日 22時

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