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煩わしき者 ページ15

烏城の小早川に不穏な兆しあり。

そんな噂が流れ始めたのは木々が色付き始める頃だった。
真意を聞くために自ら烏城を訪れた三成は滲み出る殺気を抑える様子もなく、城主である小早川秀秋と対面した。


「ぼ、ぼぼぼっ……僕だってね、一国の主なんだよっ!」


三成と比べて随分小柄に見える彼は、今にも無言の圧力に屈しそうだった。
彼なりに精一杯城主として振舞おうとしているが、相手には苛立ちしか与えられていないのが現状である。


「い、家康さんは……僕を一国の主として見てくれたんだ!きっ、君や刑部さんみたいに脅したりしてないんだ!」

「金吾」


三成は低く唸る。
そして怯える秀秋を見下ろしながら、鞘に収まったままの刀を振りかざした。

幸い背中に鍋を背負っていた秀秋は亀のような体勢をして身を守ったが、大きな音が更に三成に対しての恐怖心を駆り立てる。


「何の力も無かった貴様を取り立てたのは誰だ?貴様のような輩に城を与えてくださったのは誰だ?言ってみろ」

「ひっ、ひひ……秀吉、さま……」

「そうだろう?秀吉様に恩義を感じているはずの貴様が、何故家康に加担しようとする?」

「ひ、秀吉様は、もういないじゃないかっ!僕にだってどっちにつくか決める権利が__」


鍋に隠れていた秀秋の視界が突然横転した。
どうやら三成が力任せに鍋をひっくり返し、再び籠られないように彼の胸倉を掴んで動きを封じたようだ。


「あ、あ、あ……」

「秀吉様が、なんだ?」

「うわぁぁぁぁあん!ごめんなさいぃぃい!」


とうとう恐怖が決壊した秀秋は、大粒の涙を流しながら三成に許しを乞う。


……情けない。
こんな男を生かしていても仕方が無いのではと思ったが、吉継からは「殺すな」と念を押されている。


「望み通り貴様には選ばせてやろう。家康を裏切るか、ここで私に殺されるか……。選べ」

「うっ、裏切ります……。家康さんを、裏切ります……」


三成は秀秋の胸倉から手を離し、再び圧をかけるように彼を見下ろした。


「今後また妙な動きをしてみろ。次に貴様が見るのは自らの胴だ」


最後の脅しを受けた秀秋は、泣きながらひたすら謝り続けている。その声が鼓膜を執拗に刺激して、不愉快を手土産に三成は烏城を去った。

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三楓(プロフ) - 天智就佐さん» コメントありがとうございます!病んでる三成様を書いているといつも以上にキーボードが捗るので(笑)まだまだ頑張ります(*´∀`*) (2020年4月4日 20時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
天智就佐(プロフ) - 更新頻度が早くて内容が神なんて尊敬します!これからも頑張ってください! (2020年4月4日 17時) (レス) id: b2ae4e5a5c (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - 霧雨ルカさん» コメントありがとうございます(*´∀`*)更新頑張ります! (2020年3月30日 19時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
霧雨ルカ(プロフ) - 三楓さんの小説好きです!これからも頑張ってください!!応援してます! (2020年3月30日 13時) (レス) id: 58200a85c8 (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - 紫月姫さん» コメントありがとうございます!たまには病みかけているところから書きたいなと思いまして...(笑)自分のペースで更新頑張ります!(*´∀`*) (2020年3月28日 21時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:三楓 | 作成日時:2020年3月23日 22時

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