帰りの黄昏 ページ38
パン屋から出ると黄昏が道を染めていてまぶしかった。
ありがとう 来てくれて
そう見せるAに微笑む。
「いや、俺の方こそお前のこといろいろ知れてよかった」
Aは困った笑みをみせた。
ジャム食べるだけだったのに
「確かにな。でもお前の家族から話を聞いて、やっと俺の気持ちが固まった。
俺はなんとしてでもヒーローになる。
お前のことを守れるくらい強くなってお前の祖父に認めてもらう。そしたら……」
そしたら、Aをもらう。
しかしその言葉は口から出ることはなかった。
「悪い、何でもない。とにかく俺はお前と一緒にヒーローになる」
オレンジの光があたるAはくすぐったそうに笑った。
……さっきの、声に出てないよな?
サッ)いっしょにがんばろうね!
「ああ」
―――――――――――
「ったく、真面目に聞きやがる奴だぜ。なーんか婿入りみたいだったなあ、ばあさん」
隣の人は笑顔をたやさない。
「……小さくなったな」
「あなたも昔より小さくなりましたよ」
「そうだよなぁ、個性も衰えてきたし。にしてはばあさんの心を読む眼は健全だな。見たかよ、あの意をつかれた表情! 教員以来だ」
子供のように笑う彼は心の中でもそう思っている。
こんな個性を持った私は生きづらかった。
言葉と心の違いに埋もれて怖かった。
でも彼は裏表ない素直な人で、とてもまぶしかった。
……人を好きになれてよかった。
「いつもありがとう」
もう若くないしわがれた声で言う。
「あん? なんだよ」
「その通りですよ。あなたに出会えてよかった、そう思っただけです」
白髪のくせに色黒な夫はニカッと笑った。
「俺も、こんなべっぴんさんに出会えてよかったぜ」
あの子は私と同じく人を信じられなかったと思う。
だけど、今は違う。
今はあの少年がAを支えてくれている。
私にとってこの人が心許せる相手であるように、
Aにとってあの少年が希望の光であるのだ。
───常闇くんはね、私にとってヒーローなんだよ。
心の中でそう伝えてきたAは、とても輝いていた。
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ちづる(プロフ) - いきなりリプ失礼します。キャラクターたちの心情や常闇くんの優しさ、夢主ちゃんの考え方めちゃくちゃ好きだと思いました。続編が読みたいのが本心なのですが... (2021年5月10日 5時) (レス) id: 97693b4be7 (このIDを非表示/違反報告)
ホープローズ - 速報!本日は私、ホープローズの誕生日なのでヴィラン連合・プロヒーロー・ヒーローの卵達からの祝いの言葉を貰いたいです。お願いします。 (2019年8月23日 12時) (レス) id: 681e9ae1c6 (このIDを非表示/違反報告)
はづき(プロフ) - 常闇くん。常闇くん。ホントに好きです。大好きです。最高かよ( ˙-˙ ) (2019年7月31日 12時) (レス) id: 6ca8581b98 (このIDを非表示/違反報告)
アメジスト - んぱ(・-・)!← (2019年6月18日 22時) (レス) id: 779ef83f8c (このIDを非表示/違反報告)
響香(プロフ) - 常闇くんチョー好きです!これからも宜しくお願いします! (2019年6月12日 17時) (レス) id: b61ceed5ed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蔦虎 | 作成日時:2018年4月22日 0時