午後の戦闘訓練(グラス) ページ27
割れた窓が遠くなっていく。赤く染まるそこに黒い人影……
「A!」
常闇の叫びと同時にアイヨ! っと威勢のいい声が聞こえ、すぐさまAの元へ向かった。
目の前に迫った黒影が手を振り上げるとAは思わず顔を腕で覆った。
しかし爪で引っかかれる痛みはなく、黒紫の手は優しく体を包み込んだ。
連れ戻されたAは床に足をつける。
「大丈夫か!? ガラスの破片とか……」
腕や足を見てみたが運よく流血はない。安心させるように微笑みうなずく。
「よし、じゃあ行くぞ」
そう走りだしたとき、下からジャラっと嫌な音がした。常闇が目を落とすと、自分の足に手錠がかけられていた。
「……やられたな」
Aを助けた時間は決して長くはなかった。その短い間に轟は窓にいた常闇の足に手錠をかけていた。
「おい、上鳴。俺たちの勝ちだ」
「ウェイ?」
刺さっているフォークを抜けば親指を立ててどこかに行ってしまった。
ここ迷路みたいだから戻ってこれっかな、と思いながら、轟は追いかけずに頬の血をぬぐった。
「いや追いかけろよ! オレ死ぬだろアホ!」
「アホはお前だ。だがよく元の状態で帰ってこれたな」
「そりゃどうも……って誉めてないだろそれ!」
Aは轟の肩をたたく。
キズ 大丈夫?
「ああ、かすり傷ばっかだからすぐ治る」
「てかAのヒーローコスチューム間近で見るとかわいいな。このチャイナのヒラヒラとか……」
上鳴が手を伸ばすと、ガッと常闇は手刀ではたきおとした。
「触るな、アホ」
「オレの扱いぞんざい……って常闇もアホって言うのか」
「四人ともよくやった」
相澤先生は常闇とAを見る。
「そこの二人。
まず、千里は本気を出していないな。いくら模擬戦でも油断すればさっきのようになる。リアルで力を発揮できないぞ。
そして常闇、お前は私情をはさむな」
はっとして目をそらす。
……気づくもんなんだな。
「お前の一番も大切だが、言ったはずだ。その場の一番を考えろ、と。次から気をつけろ」
以上、と相澤先生が言うと次の組が始まった。
先生に気づかれていたことに恥ずかしさがわき上がってきて、常闇は顔をあげられなかった。
(なぁ常闇ってAのこと……)
(まあそうだろうな)
炎の隙間から見えた常闇は、見たことないくらい必死だった。
74人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちづる(プロフ) - いきなりリプ失礼します。キャラクターたちの心情や常闇くんの優しさ、夢主ちゃんの考え方めちゃくちゃ好きだと思いました。続編が読みたいのが本心なのですが... (2021年5月10日 5時) (レス) id: 97693b4be7 (このIDを非表示/違反報告)
ホープローズ - 速報!本日は私、ホープローズの誕生日なのでヴィラン連合・プロヒーロー・ヒーローの卵達からの祝いの言葉を貰いたいです。お願いします。 (2019年8月23日 12時) (レス) id: 681e9ae1c6 (このIDを非表示/違反報告)
はづき(プロフ) - 常闇くん。常闇くん。ホントに好きです。大好きです。最高かよ( ˙-˙ ) (2019年7月31日 12時) (レス) id: 6ca8581b98 (このIDを非表示/違反報告)
アメジスト - んぱ(・-・)!← (2019年6月18日 22時) (レス) id: 779ef83f8c (このIDを非表示/違反報告)
響香(プロフ) - 常闇くんチョー好きです!これからも宜しくお願いします! (2019年6月12日 17時) (レス) id: b61ceed5ed (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:蔦虎 | 作成日時:2018年4月22日 0時