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任務は滞りなく順調に進んだ。
しかし行先で出逢った老齢のご夫婦を放っておけず手伝いをしていたら、いつの間にやら乗る予定だった帰りの列車の便を逃してしまい、まだこういった遠方への用に慣れていない俺は帰る時間を大幅に間違えてしまったのだった。
今日は、招待されていた宴に出席する予定だったのだが、この時間では間に合わないかもしれない。Aも出席するらしいと聞いていたから少し楽しみにしていたのだが、仕方がないか。
と、ほとんど出席を諦めていたのだが、半刻ほど遅れて出席出来る時刻に到着したため、出席の届を出したからには顔ぐらいは出すべきかと思い、指定された会場へと向かった。俺が着いた頃には酒の匂いが噎せ返るほど殆どへべれけの隊士が騒いでいて、遅れて来た俺に気付く者など粗粗居なかった。
目で顔見知りの姿を探すと、酔いなのか単なる体調不良なのか分からないが青い顔をした善逸がお猪口を片手に迫る隊士にぎゃあぎゃあと何か喚いているのを見つけた。続いてAの姿を探すが、何処にもいない。厠にでも行っているのか、それとももう帰ってしまったのか。
それならば、任務で疲労している体を少しでも休めるため、挨拶を済ませたら俺も帰ってしまおうかと考えたその時、俺を見付けた善逸が「たんじろぉおお!!」と光の速さでこちらに飛び付いてきた。その顔は、単なる体調不良ではなく何か切羽詰まっているように見えた。
「炭治郎やばい、A消えちゃった」
「え......それは、どういうことだ?」
俺も同じく善逸の着物の裾を掴むと、おい我妻ァ!と後ろから名前も知らない隊士の怒り声が飛んで来たが「待って下さい」と俺がそちらを目で制した。
「A俺より酒苦手なのにかなり飲まされちゃってさ、気分悪くなって年上の隊士の人に連れてかれちゃったんだ。でもなんか、なんか嫌な予感するんだよ、A帰って来ないし。女隊士が一人しか居ないから俺が見てようと思ったのに、ちゃんと見てあげられてなかった。炭治郎探して来て、多分俺ここ抜けらんないし......A送ってお前も帰れ」
ふつふつと腹の底から沸き上がる熱いものを鎮めながら、「分かった」と頷いた。すると胸倉を掴まれ、涙目の善逸にとんでもない形相で下から睨まれる。
「言っとくけど本当は俺がここから帰りたいんだからな?お前が任務帰りじゃなきゃお前を生贄に俺が帰ってたよこの野郎俺の善意をお前の私利私欲に使ったらお前とは絶交だからな!!」
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さざんか(プロフ) - 外で思いだすだけでキュンキュンして泣きそうになります…素敵な作品をありがとうございます!新作アンケも失礼しました…! (2020年11月14日 0時) (レス) id: 20c7caba78 (このIDを非表示/違反報告)
碧 - 久しぶりに心から焦がれる素晴らしい作品に出会えて嬉しいです^ - ^本格的に冷え込む季節となりましたので、体調にはお気をつけてお過ごし下さいませ.更新を心待ちにしております (2020年11月13日 0時) (レス) id: e9e3f41ae9 (このIDを非表示/違反報告)
花帆 - 初めまして、めっちゃ面白いです!!すごくキュンとしますっ/// 炭治郎の態度の急変…切ないです(泣)続き気になりすぎます…!!続編も全集中で拝読したいです(*^▽^)/★*☆♪応援しております!! (2020年11月11日 2時) (レス) id: aa0adc990d (このIDを非表示/違反報告)
楓 - 更新大変だと思いますが、とても楽しみにしています。これからも応援していますね。新作アンケート…冨岡さん好きなので、お願いしたいです。 (2020年11月7日 6時) (レス) id: 91f917202d (このIDを非表示/違反報告)
しろ(プロフ) - 久々にドキドキする話でした、、続き楽しみです! (2020年11月6日 20時) (レス) id: f83c25335c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:子@さぶ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/8ef4f72c271/
作成日時:2020年10月24日 12時