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私の母は、カフェーの女給で、男客からチップを貰って生計を立てていたらしい
カフェーの女給の収入のほとんどは男客からのチップであり、店外での逢瀬は当たり前だった。母は天性の愛嬌と美貌を持ち合わせていたため、多くの男を虜にして逢瀬を繰り返し、その度にチップを貰い、ただの女給では考えられないほどの貯蓄を貯めていた。
そして、その逢瀬の際に出来てしまった子供が私だった。
母は両手で収まりきらないほどの男と交わっていたので、誰が父親かも分からないまま私を産み落としたという。母は金の入りも多かったが金遣いが荒く、出も多かったので適切に子供を堕ろす程の金はなかった。
捨てることも出来なかったのか最低限の生活を与えられながら11までは育てられたが、母が家に連れ込んだ男が、隅っこの方で異臭を放ちながら蝿や虱と共存している私を見ると顔色を変えて逃げて行った。母はその度に私を怒鳴りつけて、手では触れたくなかったのか蹴飛ばした。
押し入れに隠れていろと言ったのにそんなことも守れないのかと怒鳴られたが、そんなことは言われていなかった。母が私に言う言葉といえば、「きたならしい」「産まなければよかった」「不細工」「醜い」「お前は私の子じゃない」この五つのうちどれかぐらいのものだった。言葉をかけるのも嫌だったらしいが、母は思い込みが強い性格で、私に忠告・注意をしない癖に自分の思い通りに私が動かないと私を蹴飛ばして暴言を吐いた。
ある日、母がどれだけ待っても帰ってこなかったので、空腹のあまり何年かぶりに外に出た。そこで出逢った男の人に声をかけられ、親御さんはと尋ねられたので、私が汚いから捨てられたのだと答えた。彼は何故かその一言を聞いただけで泣きそうな顔になって、私の家に来るといいと言った。
その人が鬼殺隊、元甲の水の呼吸の使い手の隊士であった。骨格に恵まれていると言われて刀を少し習い、鬼殺隊や鬼の存在のことも教えてもらって、私は本格的に鬼殺隊への入隊を志すようになった。あの人が居なければ、私は今頃野垂れ死にしていただろう。
そして、彼の元で半年ほど修行していたところ、太刀筋が蛇の呼吸を極めるのに向いていると言って師匠にスカウトしてもらい、今に至る。私はとても運が良かった。そうでなければ、師匠やみんなと出逢うこともなかった。
当然、それ以来母にも会っていない。生きているかどうかすら不明である。
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さざんか(プロフ) - 外で思いだすだけでキュンキュンして泣きそうになります…素敵な作品をありがとうございます!新作アンケも失礼しました…! (2020年11月14日 0時) (レス) id: 20c7caba78 (このIDを非表示/違反報告)
碧 - 久しぶりに心から焦がれる素晴らしい作品に出会えて嬉しいです^ - ^本格的に冷え込む季節となりましたので、体調にはお気をつけてお過ごし下さいませ.更新を心待ちにしております (2020年11月13日 0時) (レス) id: e9e3f41ae9 (このIDを非表示/違反報告)
花帆 - 初めまして、めっちゃ面白いです!!すごくキュンとしますっ/// 炭治郎の態度の急変…切ないです(泣)続き気になりすぎます…!!続編も全集中で拝読したいです(*^▽^)/★*☆♪応援しております!! (2020年11月11日 2時) (レス) id: aa0adc990d (このIDを非表示/違反報告)
楓 - 更新大変だと思いますが、とても楽しみにしています。これからも応援していますね。新作アンケート…冨岡さん好きなので、お願いしたいです。 (2020年11月7日 6時) (レス) id: 91f917202d (このIDを非表示/違反報告)
しろ(プロフ) - 久々にドキドキする話でした、、続き楽しみです! (2020年11月6日 20時) (レス) id: f83c25335c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:子@さぶ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/8ef4f72c271/
作成日時:2020年10月24日 12時