猛省。 ページ25
傾いた夕日に照らされた背が、長い陰を作っている。俺はその影を一瞬で縮めて勢いよくその場にしゃがみ込んだ。
「や、......」
(やってしまったぁぁアアアア......!!)
Aを屋敷まで送り届け、自身も蝶屋敷へと帰る途中。今日の自分の行いを振り返って思わず頭を抱えた。頭の中には反省の二文字しかない。
通り過ぎる人々に奇異の眼差しを注がれるが、正直そんなことはどうでもよかった。また、またやってしまった。また、彼女を困らせてしまった。
『好きだ』『可愛い』
口を開けば思わず溢れてしまう本音は、嘘の付けないのが自分の性分とはいえ簡単に外に出してはいけないものだと、分かっているのに。
柔らかくて血色の薄いその肌に、簡単に触れてはいけないと、頭ではきちんと理解している筈なのに。
『炭治郎、炭治郎』『や、待って』
「っ......」
脳裏に浮かぶのは、顔を真っ赤にしながらも、決して拒絶には移らない、愛らしい想い人の表情ばかりだった。不埒な思考ばかりしてしまって、本当に自分はどうにかなってしまったのではないかとすら思う。
最終的に彼女が自分の匂いに染まったのを確認して屋敷に帰すなど、本当に、自分の行いがあまりにも子供じみていて、それでいて雄の本能が剥き出しで情けなかった。彼女のことになると、頭の中から倫理観がすっぽり抜けてしまう。
いっそのことその体に無理やり触れて、組み敷いて無体を強いてしまいたくなる時がある。
唇よりももっと深いところに口付けて、全てを奪い去りたくなってしまう。可愛い、なんて青い言葉ではなく、もっともっと、彼女の鼓膜が爛れるような愛を囁きたい。
(......本当に、どうかしている)
大切にしたいのに、滅茶苦茶にしたくなる。優しくしたいのに、手酷くしたくなる。
今日だって、本当はとても危なかった。よく自分はあそこで踏みとどまれたものだ。本当は隊服を全て取り去ってもっと別の場所へ口付けたかった。その瞳が熱で潤むのを見て、心の底からたまらなくなった。誰も知らないAが見たくて、誰のものにもさせたくなくて......
(これじゃ、獣と変わらない)
本当にここ最近の自分は駄目だ。Aに一度想いを告げてから、歯止めが効かなくなってきている。その肌に触れる心地良さを知ってしまって、許容されるのに慣れてしまって、ついつい手が伸びる。舌が「かわいい」「すきだ」と勝手に文字を打つ。
このままだと、とてもまずい気がするのだが......
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さざんか(プロフ) - 外で思いだすだけでキュンキュンして泣きそうになります…素敵な作品をありがとうございます!新作アンケも失礼しました…! (2020年11月14日 0時) (レス) id: 20c7caba78 (このIDを非表示/違反報告)
碧 - 久しぶりに心から焦がれる素晴らしい作品に出会えて嬉しいです^ - ^本格的に冷え込む季節となりましたので、体調にはお気をつけてお過ごし下さいませ.更新を心待ちにしております (2020年11月13日 0時) (レス) id: e9e3f41ae9 (このIDを非表示/違反報告)
花帆 - 初めまして、めっちゃ面白いです!!すごくキュンとしますっ/// 炭治郎の態度の急変…切ないです(泣)続き気になりすぎます…!!続編も全集中で拝読したいです(*^▽^)/★*☆♪応援しております!! (2020年11月11日 2時) (レス) id: aa0adc990d (このIDを非表示/違反報告)
楓 - 更新大変だと思いますが、とても楽しみにしています。これからも応援していますね。新作アンケート…冨岡さん好きなので、お願いしたいです。 (2020年11月7日 6時) (レス) id: 91f917202d (このIDを非表示/違反報告)
しろ(プロフ) - 久々にドキドキする話でした、、続き楽しみです! (2020年11月6日 20時) (レス) id: f83c25335c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:子@さぶ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/8ef4f72c271/
作成日時:2020年10月24日 12時