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「別に、炭治郎はそんなに謝るようなことしてないと思うけど......」
「でも、この前のAは泣きそうな顔をしてた」
「それは炭治郎にされたことと関係ないよ」
「......本当か?」
「嘘ついてる匂いする?」
炭治郎と繋いでいない方の手を彼に近づけると、炭治郎はおずおずと私の手首の辺りに鼻を近づけ、すんと匂う。
「......しない」
「うん」
「良かったぁ......」
炭治郎から、さっきのぴりぴりした雰囲気ではなく、ほっとしたような、柔らかいものが溢れてきた。私もつられて笑ってしまう。そんなに心配していたのか。私を傷付けたのではないか、なんて、小さいことを。
「......炭治郎、私ね、善逸に今日相談してたの」
「えっ?......なんの話だ?」
「好きってどういう気持ち?って」
炭治郎に言って貰えたのに、分からなかったから。
そう言うと、炭治郎はいくらか瞬きをしてから「うん」と頷いた。私の話に、真剣に耳を傾けてくれているのだと思った。
「でも、聞いてみてもやっぱり私には分からなかった。だから、炭治郎の気持ちが分からないの。ごめんなさい」
「......うん」
「けど、なんていうか......炭治郎に抱き締められたりしても、嫌って気持ちには全然ならなくて......むしろ、ちょっと、落ち着く?みたいな。気持ちになって、......ごめん、なんて言ったらいいか」
自分の言っていることが少し支離滅裂になっている気がして言葉を濁すと、炭治郎は「つまり」と言って私の肩をがっと掴んだ。その勢いに思わず彼の顔を見上げると、朱色の瞳がきらきらと輝いているのが前髪の隙間から見えた。
え、何。怖い。
「つまり、これからもAに触れても良いってことか!?」
「え......いや声でか」
ここ道の真ん中なんですが......あれ、これ、
「その、Aが嫌じゃないなら、これからもAと手を繋いだり、抱き締めたり、触れたりしたい。なるべく定期的に!本当は毎日会って話して抱き締めたいが、俺は我慢する!!Aが嫌じゃない範囲で、近くに居たい!駄目か!?」
「お、おお落ち着いて炭治郎」
「俺は今至極冷静だ!!」
どこがだ!!
道のど真ん中でなんちゅう発言をしてくれるんだこの爽やか少年は。前と同じような背格好のお婆さんが「良いねぇ、若い頃を思い出すねぇ」とか言いながら通り過ぎて行った。
「分かったから、ちょっと、人通りの少ない所行こ!」
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さざんか(プロフ) - 外で思いだすだけでキュンキュンして泣きそうになります…素敵な作品をありがとうございます!新作アンケも失礼しました…! (2020年11月14日 0時) (レス) id: 20c7caba78 (このIDを非表示/違反報告)
碧 - 久しぶりに心から焦がれる素晴らしい作品に出会えて嬉しいです^ - ^本格的に冷え込む季節となりましたので、体調にはお気をつけてお過ごし下さいませ.更新を心待ちにしております (2020年11月13日 0時) (レス) id: e9e3f41ae9 (このIDを非表示/違反報告)
花帆 - 初めまして、めっちゃ面白いです!!すごくキュンとしますっ/// 炭治郎の態度の急変…切ないです(泣)続き気になりすぎます…!!続編も全集中で拝読したいです(*^▽^)/★*☆♪応援しております!! (2020年11月11日 2時) (レス) id: aa0adc990d (このIDを非表示/違反報告)
楓 - 更新大変だと思いますが、とても楽しみにしています。これからも応援していますね。新作アンケート…冨岡さん好きなので、お願いしたいです。 (2020年11月7日 6時) (レス) id: 91f917202d (このIDを非表示/違反報告)
しろ(プロフ) - 久々にドキドキする話でした、、続き楽しみです! (2020年11月6日 20時) (レス) id: f83c25335c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:子@さぶ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/8ef4f72c271/
作成日時:2020年10月24日 12時