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「はっ?え、お前何言ってんの?」
当たり前だが、善逸は思い切り戸惑ったような声を上げた。
今更だが、善逸の中で私はあまり女として認識されていないのである。性別が自分と違えばもうそれだけで相手を姫扱いするような善逸だが、私に関しては一人の仲間として認めてくれているらしく、友人の一人として数えてくれている。
そんな善逸にする頼みとしては、少々不躾であることも重々承知の上だ。
「善逸に抱き締められて、炭治郎と違う気持ちになったら、やっぱり私にとって炭治郎って特別なのかなぁって。こんなの頼めるの善逸しか居ないし......師匠に言ったら多分肋折られる」
「......それは、ちょっと、駄目だろ」
まあ、そうだよな。薄々分かってはいたけれど。
善逸には既に好きな人が居るんだから、こんなお願いは流石に失礼か。
「ごめん、善逸は禰豆子ちゃんが好きだもんね。変なことお願いしてごめん」
「それもあるけど......友だちが好きな女の子に、そんなこと出来ないよ。俺は、炭治郎がAのことを好きって分かっちゃったから、Aを抱き締めたりはできない。ごめん」
善逸の言葉にぱちくりと瞬きをする。
「......善逸は優しいね」
「いや、ちげえよ。次炭治郎に会うとき罪悪感で死にたくなるだろ」
炭治郎ああ見えて怒るとめっちゃ怖いからなー、と善逸が零しながらお茶を啜ったその時、暖簾が捲られて見覚えのある顔が入ってきた。その顔を見た瞬間私は心臓を口から吐き出しそうになった。
臙脂の瞳がこちらを映して、少し驚いた色を見せたあと、すぐにふっと細められる。
「俺がどうかしたのか?善逸」
「う゛ーーッへ!!」
口に含んでいた熱いお茶を全部吐き出した善逸の背に、追い討ちをかけるように猪頭が追突した。
✿*✿*❀٭✿*❀٭✿
「ガハハハ!オラもっと団子持ってこい団子!!俺様はもっともっと食べられるぞ!!」
「こら伊之助、あんまり食べると夕餉が食べられなくなるぞ。あと、店の人にはちゃんと敬語を使うんだ!」
いつも通り、伊之助をきっちり制御してフォローに回っている炭治郎。どうしよう、全然目が合わせられない。この間のことを思い出してしまう。私、炭治郎を突き飛ばして逃げたんだもんな......普通に気まずい......炭治郎も流石に話しかけてこないし......
と、その時、それまで団子に夢中だった伊之助がこちらを振り返ってとんでもない一言を放った
「あ?......お前らふたり、番ったのか?」
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さざんか(プロフ) - 外で思いだすだけでキュンキュンして泣きそうになります…素敵な作品をありがとうございます!新作アンケも失礼しました…! (2020年11月14日 0時) (レス) id: 20c7caba78 (このIDを非表示/違反報告)
碧 - 久しぶりに心から焦がれる素晴らしい作品に出会えて嬉しいです^ - ^本格的に冷え込む季節となりましたので、体調にはお気をつけてお過ごし下さいませ.更新を心待ちにしております (2020年11月13日 0時) (レス) id: e9e3f41ae9 (このIDを非表示/違反報告)
花帆 - 初めまして、めっちゃ面白いです!!すごくキュンとしますっ/// 炭治郎の態度の急変…切ないです(泣)続き気になりすぎます…!!続編も全集中で拝読したいです(*^▽^)/★*☆♪応援しております!! (2020年11月11日 2時) (レス) id: aa0adc990d (このIDを非表示/違反報告)
楓 - 更新大変だと思いますが、とても楽しみにしています。これからも応援していますね。新作アンケート…冨岡さん好きなので、お願いしたいです。 (2020年11月7日 6時) (レス) id: 91f917202d (このIDを非表示/違反報告)
しろ(プロフ) - 久々にドキドキする話でした、、続き楽しみです! (2020年11月6日 20時) (レス) id: f83c25335c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:子@さぶ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/8ef4f72c271/
作成日時:2020年10月24日 12時