▼ ページ11
求婚を、受け入れてもらった?
待ってくれ、まず求婚なんてされた覚えがない。いつ、どんな風に、炭治郎は私に求婚したって言うんだ。あの熱烈な愛の告白なら受けたが、求婚は全く身に覚えがない。された覚えもないのだから、当然それを承諾した覚えもない。
炭治郎の言った言葉を頭で必死に処理していると、彼は更に追い討ちをかけるようなことを言った。今度は、私の目を真っ直ぐに見て言い放った。
「俺の『好き』は、Aが全部欲しい、の好きだ。多分、これが一番意味的に近いと思う」
「は、え......え?」
「Aの傍に居たいし、Aともっと話したいし、Aに触れたい。......近くに、行きたい。近付いていいか、A」
「ちょ、ちょっと待って」
「分かった、待つ。待つから、これ以上離れないでくれ。これ以上距離を取られると、俺から近くに行きたくなる」
なんだか、さっきからとんでもないことばかりを言われている気がする。炭治郎って、こんなだっけ。今までこんなこと言われたことないし、そんな感情を向けられているなんて全く気付かなかった。
全部欲しい、の好きってなんだ。全部欲しいって、もし、炭治郎に全部あげたら、私はどうなってしまうんだ。
「A、どのくらい待てばいいんだ?どのくらいまで待てば、そっちに行ってもいいんだ?教えてくれ、A」
「お、お願いだから、待って......わ、わかんないから。私、分かんない......」
そう言って、炭治郎の眼力の強さに思わず一歩だけ後ずさると、その瞬間炭治郎は目の色を変えて一瞬でこちらに距離を詰めてきた。ふわりと陽の光の匂いがして、手首を捕らえられて、真っ直ぐに見下ろされる。熱を持った赫灼の瞳が、私を捕らえて放さない。
「逃げないでくれ、A。頼む」
炭治郎の鼓動の音が聞こえる。私の鼓動の音と混ざり合って、響いている。炭治郎にも、聞かれているのだろうか。私の情けない心臓の音が。
「......A、なんで逃げるんだ。Aからは、嫌がってる匂いがしない」
「ぁ、あ......」
「それどころか、こんな匂いをさせて......そんな、顔をして......頼むから、嫌なら俺を突き飛ばして逃げてくれ。そうじゃないと、俺が......」
炭治郎の手が頬に降りてくる。顔が、近い。逃げろと言ったり逃げるなと言ったり、本当に炭治郎の言っていることはわからない。何が正解なんだ。私はどうしたらいいんだ。
私は、いったい......
(どう、したいんだ)
2121人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さざんか(プロフ) - 外で思いだすだけでキュンキュンして泣きそうになります…素敵な作品をありがとうございます!新作アンケも失礼しました…! (2020年11月14日 0時) (レス) id: 20c7caba78 (このIDを非表示/違反報告)
碧 - 久しぶりに心から焦がれる素晴らしい作品に出会えて嬉しいです^ - ^本格的に冷え込む季節となりましたので、体調にはお気をつけてお過ごし下さいませ.更新を心待ちにしております (2020年11月13日 0時) (レス) id: e9e3f41ae9 (このIDを非表示/違反報告)
花帆 - 初めまして、めっちゃ面白いです!!すごくキュンとしますっ/// 炭治郎の態度の急変…切ないです(泣)続き気になりすぎます…!!続編も全集中で拝読したいです(*^▽^)/★*☆♪応援しております!! (2020年11月11日 2時) (レス) id: aa0adc990d (このIDを非表示/違反報告)
楓 - 更新大変だと思いますが、とても楽しみにしています。これからも応援していますね。新作アンケート…冨岡さん好きなので、お願いしたいです。 (2020年11月7日 6時) (レス) id: 91f917202d (このIDを非表示/違反報告)
しろ(プロフ) - 久々にドキドキする話でした、、続き楽しみです! (2020年11月6日 20時) (レス) id: f83c25335c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:子@さぶ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/8ef4f72c271/
作成日時:2020年10月24日 12時