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「わぁ……！」
ドキドキしながらお姉さんからそれを受け取り、ありがとうございます！と頭を下げた。受け取ったそれは少し暖かくて、柔らかくて、見た目がとっても可愛らしくて、私は食べるでもなくそれを幸せな心地で見つめていた。
「食べないの？」
「あっ」
彼の方を見上げると、その紫色の目は面白そうな色から少し優しげな色に変わっていた。それが何故かは分からなかったけれど、私は彼にもありがとうございます！とお礼を言った。
「あの、お金はちゃんと後で払いますから！」
「頑固だなぁ、きみ」
「はい！いただきます！」
ドキドキしながら口を開け、イチゴとクリームのたっぷりからまった部分へとかぶりつく。その瞬間口の中に広がった、甘みと強烈な幸せの味に、私は目を見開いて頬を抑える。初めてだ、こんなの。初めて味わったその幸せを舌で転がし、喉の奥へとやり、ほうっと息を吐いて思わず綻んでしまう口元を隠せない。
怖い思いを沢山したけれど、来てみて良かった。やっぱり私から取り上げられていた娯楽には、幸せが沢山あったんだ。
そこでふと上から向けられていた視線を感じ、お兄さんの方を見上げると……
「……あの、私、変でした？」
「え？」
「すごくぼーっと見られていたので……あの、変でしたらすぐにおっしゃってください！」
「あーいや、そういう訳じゃないけど」
うーん、と口元を隠すように抑えて私から目を逸らす彼に首を傾げる。そこで私はあっと気が付いた。なるほど、そういうことか。
「お兄さんも、クレープが1口欲しかったんですね！」
「はあ？」
「あの、まだこのスプーン口を付けていないので、汚くないところでしたら召し上がって頂いて大丈夫だと思います！」
「いやオレは、」
身を引きかけたお兄さんは、何かを考え付いたような顔をしてふと口元を擡げて見せた。そして、「じゃあ遠慮なく」とこちらへ手を伸ばした。スプーンへ伸ばされるのだと思っていた彼の綺麗な指先は、そのまま私の手首を捕まえる。えっと言う間もなく引き寄せられ、彼はクレープに直に齧り付いた。唇の端についたクリームを妖艶に舌で舐め取り、「ごちそうさま」と笑った彼に呆然としていたが、すぐに頬に熱が集まって指先が震え、そのまま俯いてしまう。
なんて人だろう、こんな風に食べていたのものをそのまま口付けられて食べられるなんて、同性の学友ともしたことがない。回し飲みや、食べ物の共有は、はしたないと教えられてきたから。
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名無 - 神すぎる。占ツクでここまで完成度の高い作品は久々に見ました。 (2022年2月13日 13時) (
レス) @page25 id: 918f2226ec (このIDを非表示/違反報告)
桜妃(プロフ) - 作者様語彙力ありすぎでは…！？更新楽しみにしてます！ (2021年9月6日 3時) (レス) id: 16f20e3b96 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぴ子(プロフ) - はじめまして…こんなに作品に引き込まれたのは初めてです；；主様のペースで更新楽しみにしております！ (2021年8月26日 12時) (レス) id: de92cbd6b8 (このIDを非表示/違反報告)
しいい - すごく好きです！続き楽しみにしてます！！ (2021年8月26日 1時) (レス) id: 69df95b685 (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - 大っ好きです！蘭ちゃん…可愛すぎる…更新楽しみにしてます\(//∇//)\応援してます！ (2021年8月25日 22時) (レス) id: f64d60a5d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：子@さぶ
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/8ef4f72c271/
作成日時：2021年6月30日 23時
