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やっと絞り出した声は、どうにも震えた挨拶だったけれど、少しずつ冷静になってきたところで、電話の向こうがなにやら騒がしいのが聞こえた。やや重低音に聞こえる音楽に、男女の声が折り重なって耳に直に響いてくる。
はっとした。きっと蘭さんは、今何か、よく分からないけれど、騒がしい所で遊んでいらっしゃるに違いない。取り込み中に、決まっている。
「ご、ごめんなさい蘭さん。あの、大した用事では御座いませんので、お取り込み中のようですし、今日はこれにて失礼致します。急に電話なんてかけてしまって、申し訳ありません」
『え？いや、待って待って、ちょ、別に取り込んでないんだけど。……移動してるから、ちょっと待って。声、ちゃんと聞けるとこ、移動するから』
「えっ……」
なんて申し訳ないことをしてしまっているんだ、私は。明らかにご友人たちと興じておられただろうに、わざわざ移動させてしまって。しかも、わざわざ聞く内容が、明日の服装のこと、だなんて。
あわあわと申し訳なさに慌てふためいていると、先程の喧騒が遠ざかっていき、やがてそれらがほとんど聞こえない地点で蘭さんの声が飛んできた。
『ハーイ、ごめんね待たせて。んで、大したことない用事ってなに？』
「あの、本当にすみません……本当に、大したことでは、ないんですけれど」
『うん。大したことじゃないのに電話かけてくれたの、嬉しいから、なんでもいーよ』
なんでそんな、甘い言葉が出てくるんだ。彼にとっては軽いリップサービスのようなものなのだろうけれど、そう言って貰えると少しほっとする。
まだどくどくと間抜けな音を鳴り響かせている胸を抑えつつ、私は「えっと……」と切り出した。
「あの、蘭さん……」
『ん、何？』
「……あ、明日……私は、何を着ていけば良いのでしょうか……」
『……は？』
しーん、という部屋鳴りまでハッキリと聞こえるほどの静寂が、暫時流れた後。
『っふ、ふは、ぁはは、まじ？……それだけ聞きに、オレに電話、かけてきたの。っふ、ふふ』
「うっ……」
思わずといったふうに漏れ出す笑いを隠そうともしないまま、蘭さんにそのように聞かれてしまい、私は顔にどんどん熱が集まってくる。
「わ、忘れてください。もう、切りますから」
『なんで？たぶん一生忘れねーって。明日何着て行ったらいい？とか聞かれたの、初めてだわ。いいから、繋いでろって』
「っ……ば、馬鹿に、しないで。本当に、分からないんです。男の人と出掛けるのなんて、初めて、なんですから」
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名無 - 神すぎる。占ツクでここまで完成度の高い作品は久々に見ました。 (2022年2月13日 13時) (
レス) @page25 id: 918f2226ec (このIDを非表示/違反報告)
桜妃(プロフ) - 作者様語彙力ありすぎでは…！？更新楽しみにしてます！ (2021年9月6日 3時) (レス) id: 16f20e3b96 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぴ子(プロフ) - はじめまして…こんなに作品に引き込まれたのは初めてです；；主様のペースで更新楽しみにしております！ (2021年8月26日 12時) (レス) id: de92cbd6b8 (このIDを非表示/違反報告)
しいい - すごく好きです！続き楽しみにしてます！！ (2021年8月26日 1時) (レス) id: 69df95b685 (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - 大っ好きです！蘭ちゃん…可愛すぎる…更新楽しみにしてます\(//∇//)\応援してます！ (2021年8月25日 22時) (レス) id: f64d60a5d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：子@さぶ
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/8ef4f72c271/
作成日時：2021年6月30日 23時
