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クラスの提出物を職員室に届けに行くと、担任の正田先生から呼び止められてニコニコと成績の話をされた。先生から呼び止められた時に話されるのは、いつも決まってこういう話題だ。退屈で、面倒で、ずっと「良い子」を取り繕っていないといけないから正直疲れてしまう。先生の前では常に微笑みを絶やさず、丁寧な言葉遣いと心配りを忘れないようにという、これも両親の躾である。
「いやぁ本当に、Aは別のクラスの先生方からも褒めて頂いているし、このままの成績を維持すれば国立大学への進学はほぼ間違いないな」
「そんな……私なんてまだまだです」
「まったくウチの娘にも爪の垢煎じて飲ませてやりたいよ。あぁ、ウチの娘は今年中学に上がったんだがね、これがまたお転婆で……」
別に聞きたくもない定番の娘自慢も、笑顔で興味を持っているふりをしなければならない。相槌を絶やさず、愛想笑いも絶やさず、常に相手の顔色を伺う___これが、両親が私に躾けた処世術だ。
「……と、そういえば。いやぁね、ここだけの話なんだが、A。ちょっと正直に答えて欲しいことがあるんだが」
「えっ？はい……なんでしょう」
「いや、先生もまさかAを疑っているわけではないんだ。オマエは優秀だし、真面目だし、普段の生活態度にも文句のつけ所がない。だからな、気を悪くしないで欲しいんだが……」
長い前置きの後、正田先生は銀縁眼鏡の奥の瞳で私を見つめながらこう言った。
「昨日、六本木なんかに行ったりしていないよな？」
「____え、」
思わず息が詰まってしまった。私の驚愕の表情に、慌てたように先生がいやッ、と言葉を続ける。
「まさかまさか、見間違いだとは思うが、昨日出張に行ってらっしゃった先生が偶然そこを通りかかった時に、うちの制服を着た生徒が居たと言うんだ。しかしまぁ、その場所は××通りといって、治安も良くないし、きちんとうちの生徒かどうか確認出来ずに帰って来てしまったようでな。そしてその先生が言うには、その……Aと、顔が似ていたと、そう仰るんだ」
背中に冷たい汗が流れていく。どうしよう、どうしたら、いいんだろう。もしこのことが父母に知れてしまったら、いったいどれだけ怒られるだろう。
口を噤んで黙り込む私に構わず、担任はべらべらと喋り続けている。
「もちろん先生は否定したよ。まさかうちのAがそんなことするはずがないとね。それでまぁ、一応の確認なんだが、昨日は……」
「私じゃ、ありません」
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名無 - 神すぎる。占ツクでここまで完成度の高い作品は久々に見ました。 (2022年2月13日 13時) (
レス) @page25 id: 918f2226ec (このIDを非表示/違反報告)
桜妃(プロフ) - 作者様語彙力ありすぎでは…！？更新楽しみにしてます！ (2021年9月6日 3時) (レス) id: 16f20e3b96 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぴ子(プロフ) - はじめまして…こんなに作品に引き込まれたのは初めてです；；主様のペースで更新楽しみにしております！ (2021年8月26日 12時) (レス) id: de92cbd6b8 (このIDを非表示/違反報告)
しいい - すごく好きです！続き楽しみにしてます！！ (2021年8月26日 1時) (レス) id: 69df95b685 (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - 大っ好きです！蘭ちゃん…可愛すぎる…更新楽しみにしてます\(//∇//)\応援してます！ (2021年8月25日 22時) (レス) id: f64d60a5d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：子@さぶ
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/8ef4f72c271/
作成日時：2021年6月30日 23時
