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時雨side
「なんですって?斬る!?」
そんな総悟の言葉を横耳に電柱に張り出された貼り紙を見る。そこには白髪(私たちにとっては銀髪です)の侍への忠告が記されていた。
てか、斬るっつったか今?それは困る。大いに困る。何故かって?だってまだ生命保険かけてないもん。
ま、残念ながらたぶん死なない。残念ながら。
「あァ、斬る」
「件の白髪の侍ですかィ」
「銀髪ね」
それだけは私のプライドが許さない。
「そうそう、金髪」
「耳がおかしいのかな」
土方さんはあの貼り紙を剥がし、丸めて総悟の持っているバケツに放り込む。ちなみに私のバケツはもう既に満タンだ。
「ウチの面子ってのもあるが、あれ以来隊士どもが近藤さんの敵とるって殺気立ってる。でけー事になる前に俺が始末する」
うわ、本気だ。まじの目だわ。ちょっと生命保険かけてきていい?時間稼ぎしとこ。
「ほんとそーゆーの止めません?一応これでも警察なんですから。相手も一般人でしょーし」
「一般人でも、木刀持って暴れた一般人だ」
確かに。あれ、でも喧嘩は江戸の華って言いません?
平和は江戸の華だったかな…?
「土方さんは二言目には“斬る”で困りまさァ。古来暗殺で大事を成した人はいませんぜ」
あれ、大化の改新って暗殺の後に起こったんじゃ…?
「暗殺じゃねェ。堂々と行って斬ってくる」
「そこまでせんでも、適当に白髪頭の侍見繕って連れて帰りゃ隊士たちも納得しますぜ。これなんてどーです。ホラ、ちゃんと木刀もちな」
そう言ってそこら辺にいたホームレスとおじさんに木刀を持たせている総悟。
……隊士たちの頭がそこまでスッカラカンだとは思ってなかったわ
「あ、白髪じゃなくて銀髪です!」
「金髪だって?」
「あ、もういいです」
「ジーさん、その木刀でそいつの頭かち割ってくれ」
「だから一般人を巻き込むもんじゃありません、反省なさい!」
「はい……ってなるかァ!!」
あーあ、いい感じのとこまで行ったのに。
「パッと見さえないですが、メガネとったらホラ、武蔵じゃん」
「何よその無駄なカッコよさ!!」
「いやマジでこれ何か一つや二つ逸話出てきそーなイケメンだわ」
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作者名:花遥 | 作成日時:2019年10月3日 22時