第零点五訓.冷たくて、暖かいもの ページ17
Noside
暗い夜道。
歌舞伎町にネオンの光がともり始める時間帯。
そんな夜遅くに街中を徘徊する命知らずな少女が1人。
「ねぇ、お姉さん。うちで遊んでいかない?」
「うちにおいで!」
彼女に掛けられるキケンな言葉。
それを全て無視して少女は歩き続ける。
「無視すんなよ」
だがしかし、世の中どんな奴がいるか分かったもんじゃない。自分が強い者だと過信し、弱い者にそれを誇示することでしか自己を保つことの出来ない本当に弱い者もいる。
「なにするんですか」
彼女の発した言葉は無機質で、感情は篭っていなかった。しかし、この男を見つめるその瞳は虚ろで、どこか恐怖を帯びていた。
「お兄さんと遊ばない?」
「遠慮しておきます」
そう言って歩み続ける。しかし、男がそれを許すはずがなく、そのまま路地裏へ引き入れられる少女。
少女は助けて、と悲痛な声をあげるが、街をゆく人々は見向きもしない。まるで日常であるかのように。
「逃げんなよ、キモチイよ?どう?」
「……」
その少女は怯えきった目で男を睨む。が、その男には逆効果で、それが引き金となり、男を本気にさせてしまった。
「…そそるねぇ。ね?ヤろう?」
少女は固く口を結び、腰に掲げていた刀を取り出した。夜の月明かりで怪しく光る刀は男の首元でとまる。
ヒュッと小さく喉をならす男。
「……」
「ご、ごめんな?俺が悪かったから……」
その言葉を聞くやいなや彼女は刀をしまい、また大通りへと歩み出した。何事も無かったかのように路地裏からでてきた彼女の姿を見た者たちは彼女にの異様な何かを感じ取ったのだろう。それからは誰も彼女に声をかけるものはいなかった。
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作者名:花遥 | 作成日時:2019年10月3日 22時