・ ページ46
.
映画も中盤に差し掛かったところ、ソファに置いた手に目黒くんの手が重なった。
隣の目黒くんをこっそりと盗み見るが、その表情は変わることなく真っ直ぐにテレビの画面に向けられていた。
真剣に観てるせいか、目黒くんの口が小さく開いている。
私は重ねられた手をひっくり返して、握り返す。目黒くんが驚いたようにこちらを一瞬見た気がした。
互いに視線はテレビ画面に映し出されるヒーローを観ているのに、手は繋いだまま。
時々繋いだ手を小さく動かしたり、強く握ってみたり。
映画に集中しているはずなのに、時々与えられるその刺激に意識が逸れていくのが自分でもわかる。
「ねぇ、Aさん？」
「んー？」
お互いテレビ画面に視線を向けたまま。
「これさ、主人公最後どうなるんだろ」
「さー？」
「でもなんかかっこいいよね」
「うん、カッコいい」
「…そろそろ一緒に住む？」
「うん………って、は？！」
つい先ほどまで繰り広げられていた会話から、急になんの脈絡もない言葉が放たれ、動揺して大きな声を上げると、目黒くんは私のほうを見ながら「びっくりし過ぎ」と小さく笑う。
「だって、なんでこのタイミング？」
さっきまで映画の主人公の行く末の話してたじゃん。
「なんか、今言いたくなったから？」
「なにそれ」
理解できない、と目黒くんのほうを見れば「その顔ほんとAさんよくするよね」なんて笑う。
付き合う前から目黒くんは時々突拍子のないことを言っていたけれど、付き合ってからもそれは変わらず。
そして私はそれにいつまでも慣れずにいた。
「で、どーする？」
「どうするもこうするも」
目黒くんとこうして過ごすことが当たり前になりつつあるけれど、一緒に住むという発想には至らなかったのが正直なところ。
戸惑いの声をあげたはずなのに、目黒くんはなぜか自信有り気な顔でこちらを見つめる。
「それは肯定って受け取るけど？」
「どこをどうしたらそう思う？」
「え、やなの」
「嫌じゃないけど、」
私がそう言うと目黒くんはじゃあ決まりね、と笑い、繋いだ手にぎゅっと力を込めた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3332人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さーや(プロフ) - なぎぷちょへんざーさん» 聞きました！月が綺麗ですね、の意味をめめが知ってて衝撃だったんですが？！笑 壁に穴開けよ、がもうめめ過ぎて笑いましたw (2020年4月3日 7時) (
レス) id: 6178770b80 (このIDを非表示/違反報告)
なぎぷちょへんざー(プロフ) - この小説お気に入りです！素のまんま聞かれました？お便りの内容を聞いた瞬間この小説を思い出しました、笑 (2020年4月2日 22時) (レス) id: 831076a685 (このIDを非表示/違反報告)
さーや(プロフ) - 夢さん» コメありがとうございます！どういうお話の展開にするか悩んでいたのでそう言っていただけで嬉しいです…！ありがとうございます！ (2020年3月23日 20時) (レス) id: 6178770b80 (このIDを非表示/違反報告)
さーや(プロフ) - たぴおかさん» アーカイブでひーくんチュロス見ましたがあれはたしかにやばい…！！うどんで盛り上がるスノちゃんたちが可愛すぎました…！ (2020年3月23日 20時) (レス) id: 6178770b80 (このIDを非表示/違反報告)
夢(プロフ) - 初めまして。コメント失礼します。今まで色んな作品を拝見してきたのですが、久しぶりにここまで展開が気になり夢中になって最後まで読んじゃいました。とても素敵な作品でした！ (2020年3月22日 21時) (レス) id: 97d80eb079 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さーや
| 作成日時：2020年3月9日 17時
