瑠璃色の空～特別編～ (ページ8)

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俺とAが仲良くなるのに、時間はかからなかった。

…Aは、本当にそっくりだった。

俺の思い出の中の女の子と。

俺の、初恋とも呼べる女の子と…

彼女は、俺のことを「智さん」と呼んで
俺も、彼女のことを「A」と呼んだ。

そんな暖かな関係が、心地よくて好きだった。

…

2人で会うときは、彼女の家が多かった。

特にこれといってすることは決まっていなかったけど。

…2人でいられれば、何でも良かったのかもしれない。

読書をしたり、散歩をしたり

彼女が料理を作るのを、俺も一緒に眺めたり。

そんななんでもないことが、すごく楽しかった。

…

「A、何読んでるの？」

ある日の、のんびりした昼下がり。

Aがあんまり見たことない上品なハードカバーの本を読んでいたから尋ねてみると

顔を上げて中身を見せてくれた。

「小説よ。英語で書かれたものだけど…」

「うわ、何書いてあるか全然わかんね…

Aすごいな…」

思わず顔をしかめると、くすくすと笑われた。

「私も最初は分からなかったよ。

勉強してやっと読めるようになったし…」

もう一度ちらりと文面を覗き込んでみたけど、やっぱりそれはよく分からない文字の羅列にしか見えない。

「私、これでも学校で英語を勉強してるんだよ。
今は春休み中で学校行ってないけどね。」

「そっか、春休みか…」

そう言われるまで、全然気づかなかったけど

そうだよね。

一般の、Aくらいの歳の人は学校があって

しかも学校は、今の期間春休みなのか。

…今まで一度も学校に行ったことがない俺は、そのことをどうしても忘れがちだった。

「あのさ、勉強すれば、その本俺にも読める？」

…産まれて初めて、勉強したい、と思った。

今まで、生きていく上で最低限の勉強と戦闘技術しか学んでこなかった俺が、まさかそんなことを考えるなんて…

自分でも信じられなかったけど。

「うん、智さんならきっと読めるようになるよ！」

Aは俺を見て嬉しそうに頷くから

俺も自然と笑顔になった。

「…それならさ、Aが教えてくれる？」

俺がそう提案すると

「へっ？私？」

目をまん丸くさせて驚くA。

「え、ダメ？」

「そういうわけじゃなくて…私で良いのかなって思ったから。
ごめん、ちょっとびっくりしちゃった。」

Aは照れたように笑って、もちろんと頷いた。

こうして、俺たち2人の勉強会が始まった。