☆ ページ28
次に目を開いて、視界に映ったのは
見慣れた天井だった。
「…う。」
体を動かそうとするとズキンと痛んで、思わず呻き声を上げた。
そっと慎重に頭を動かして周りを見渡すと、そこは紛れもなく家で、俺の部屋に間違いなかった。
あの後記憶がないけど、カズとジュンが俺を家に連れて帰ってくれたんだろう。
悪いことしちゃった。2人は大丈夫だろうか。
「あ…」
そんなことを考えながらふと見ると、ベッドの隣の狭い隙間に智くんが寝ていた。
まさかそんなところで寝てるとは思わなかったから思わず飛び起きそうになって、体がズキンと痛んで慌ててもう一度布団に潜り込む。
焦って上がった息を整えていると、智くんがゆるゆると瞼を開いた。
「…ん、起きた？」
「う、うん。」
智くんは立ち上がって伸びをすると、ゆっくりと俺の名前を呼んだ。
「…翔くん。」
「…うん。」
何を言われるのかを想像して、俺は思わずぎゅっと目をつぶった。
2人を危険な目に合わせたんだ。
怒られたってしょうがない。
そんなことを考えながら真っ暗な視界の中俯いていると、急にポンと頭に手が置かれた。
「2人を守ってくれてありがとう。」
「…へ。」
思いがけない言葉に顔を上げると、智くんが微笑んでいた。
「翔くんが2人を守ってくれたんでしょう。
2人は傷ひとつないよ。無事で帰ってこれたのは翔くんのお陰だよ。」
智くんの優しい声に、張り詰めていた心が急に弛緩して大粒の涙が溢れ出た。
「え、え⁈なんで泣くの？俺、何か言っちゃった？」
俺の表情を見て慌てる智くん。
俺はブンブンと首を振った。
「違う…安心したの…」
ボロボロと溢れる涙。
こんなに泣いたら智くんが困っちゃうってわかってるのに止まらない。
智くんはそっと俺の顔を覗き込むと、綺麗な指で俺の涙を拭った。
「頑張ってくれて、ありがとう。」
わしゃわしゃと頭を撫でられる。
子供扱いされてるみたいだけど、なんでこんなに安心するんだろう。
「ありがとう…智くん。」
俺の言葉に、嬉しそうに智くんが笑った。
…
少しして、体調も感情も落ち着いてきてリビングに行くと
カズとジュンが飛んできた。
「翔さん、翔さん…ごめんなさいっ！」
「ほんとにほんとに、ごめんなさい…」
大丈夫だよ、と微笑んで頭を撫でると
2人も安心したように笑った。
「2人ともケガはない？」
俺の問いに、2人は全然大丈夫だと頷いて
俺もホッと息を吐いた。
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