☆ ページ25
「…あれ？」
一瞬後に着いた場所は自宅…ではなくて
鬱蒼とした森。
さっきまでいた裏山よりも黒く高い木が辺りを取り囲んでいる。
「ここ…どこ？」
ジュンが戸惑ったように周りを見渡して
「え、えっ？」
カズが慌てて声を上げる。
「…カズ、ここは？」
俺もカズに尋ねると
カズは「違うっ！」と焦ったように叫んだ。
「ぼ、僕はこんな場所知らないっ！
僕は記憶にある場所しか行けないんだから！
少なからず、僕がイメージしたのは家だもん、こんなところに飛ぶはずなんて…」
いつも冷静なカズが珍しく、目の前で動揺している。
そんなカズを見ての不安からか、ジュンもその場から一歩も動かずに、注意深く辺りを見渡してじっとしていた。
…俺は努めて冷静に、周りの状況を確認した。
カズの瞬間移動が失敗した可能性も、なきにしもあらず
だけど、自分がイメージした場所に飛ぶはずだ、とカズは言う。
それは嘘じゃないはずだ。
自分の能力のことは誰がなんと言おうと
自分自身がよくわかるんだから。
明確な理由も何もない、ただわかるから。それだけだ。
…そうなると、俺たちはなんでここに飛ばされたんだ？
「…引き寄せられた？」
今まで黙っていたジュンがポツリと呟く。
「なんて言った？」
「誰かに、引き寄せられたのかなって…」
…その時。
その言葉が引き金となって、ふいに脳裏をよぎった言葉があった。
�牴兇呂泙辛�活する、って。
あいつ、警察に引き渡す寸前にそう言ったんだ。��
___________まさか。
「…カズ。能力で、ここがどこかわかるか？」
無意識に声が震えた。
カズがこっちを振り向く。
その唇がゆっくりと動くのと同時に、後ろの木陰がゆらりと揺れて。
…音もなく目の前に現れた人物がいた。
「能力なんてなくたってわかる。3丁目第4地区。それ以外にどこがある？」
…聞いたことがない声だけど
何者なのかは嫌なくらいよくわかった。
信じられないけど、信じたくないけど
目の前の現実を受け入れるしかない。
カズとジュンは驚いて目を見開き、男がいきなり現れたこの状況を理解しきれていないようだった。
「…お前は。」
俺が声を絞り出すと、目の前の男はニヤリと笑った。
「噂くらいは聞いてるんだろ？」
その声にぞくり、と体が総毛立つ。
俺はカズとジュンの前に立って2人を隠した。
「ゲンジだ。名前なんて意味ねえけどな。」
男の声が闇に響いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 474人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
