☆ ページ17
一瞬、部屋の中をブァッ…と風が吹き抜け
びっくりして窓の方を向く。
開いた窓の前には、黄緑色の髪を揺らした雅紀が大きく肩を上下させて立っていた。
「ただい、ま…」
「雅紀、どうした？」
慌てて尋ねると同時に智くんがふわりと立ち上がって雅紀の元へと近づいた。
「…ケガは？」
「大丈夫、ちょっと手こずっただけ。」
それなら良かったけど、と息を吐くと
智くんは俺に状況を説明してくれた。
「雅紀に依頼に行ってもらってたの。
場所は3丁目第4地区、能力は念動力。」
「ああもう、ほんと厄介だった…」
どんな相手だったのかと尋ねると、雅紀は眉根を寄せて唸るように答えた。
「先っぽが槍みたいに尖った長い鎖を自分の手足みたいに操ってさ、攻撃してくんの。
近くには寄れないし、かと言って遠くからだと俺の風の威力は弱まっちゃうしで大変だったんだ。」
確かにそう考えると、雅紀だとちょっと相性が悪い気がする。
「俺が行ければ良かったんだけど…」
智くんが申し訳なさそうに言ったけど、雅紀がううんと首を振った。
「リーダーは最近ずっと依頼に行っててくれたじゃん。これは俺たちの仕事だもん。みんなで助け合うのは当たり前でしょ？」
「うん…そりゃそうだけど。」
雅紀の意見も智くんの気持ちもわかる。
仕事を仲間が一人で抱え込もうとしてるならみんなで分け合いたいし、仲間が傷ついて帰ってきたら誰だって心配にもなる。
「…でも結局、ちゃんと捕まえられたんでしょ？」
「まあね。そりゃもちろん。」
俺の問いにそう答える雅紀だけど、何故か表情は浮かなくて。
心配事があれば表情に出る雅紀だ、上手く笑えてないのは明白だった。
「雅紀、何かあった？」
そっと訊ねると、雅紀がちらりと俺を見る。
何も言わないのはYESと同義だろう。
「何かあった、っていうか…ほんの小さなことなんだけど。」
雅紀がそう前置きをして、彼に似合わないくらい小さな声で話し出した。
「さっき言ったみたいに手強い相手だったんだけど、頑張って捕まえたんだ。被害者もいるし、そんな危険なやつ野放しにできないもん。
で、あいつの鎖を俺の風の刃で断ち切って捕まえたんだけど…」
そこでまたちらりと俺と智くんを見る雅紀。
そんなに俺たちの顔を伺わなくてもいいのに…
「俺はまた復活する、って。
あいつ、警察に引き渡す寸前にそう言ったんだ。」
雅紀はそう言って、まるで死を宣告されたかのように暗い瞳をしていた。
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