夏夜の星は赤く輝く。 ページ13
櫻井side
ただいま、時刻はPM11時半。
最近はだんだん日中の気温も上がってきて、夜も肌寒さがなくなってきたくらい。
窓の外は真っ暗で、リビングに1人。
カズナリとジュンはもう寝ているだろうし、智くんと雅紀は寝ているかはわからないけど、家の中は何の音も聞こえない。
俺は目の前に広げた教科書を一通り見終えて、息を吐いた。
「あー、懐かしいなあ…」
いつかに勉強した算数や理科、国語、社会、英語。
うろ覚えになってる部分も含めて、なんとなく懐かしくなった。
カズとジュンがここに来てからもう5、6ヶ月。
2人も暮らしぶりに慣れて、能力もコントロールできるようになってきた。
俺たちも、2人の性格とか好き嫌いもわかってきて
毎日が楽しい。
「ふぁ…」
大あくび。
智くんにはあんまり無理するなと言われてはいるけど、熱心に勉強してくれるカズとジュンを見てるとこっちも熱を入れて準備をしちゃうのもまた事実。
それでもやっぱり、眠気には勝てなくて。
「明日の予習終わったら寝よ…」
誰に言うでもなくそう呟いて、俺は1番近くにあった理科の教科書を手に取った。
「この前ここまでやったから…
今度はここからか。」
ぱらりぱらりとページをめくる音がリビングに響く。
「夏の星座か…」
広げたページに大きく載っているのは、壮大な夜空。
天の川が中央に映り、様々な星々が煌めいている。
「2人にも見せたいけど、ここら辺じゃ無理だよなあ…」
白鳥座のデネブ、鷲座のアルタイル、琴座のベガが作る夏の大三角
赤い星のアンタレスが特徴のさそり座
首元に蛇を従えたへびつかい座
神話で有名な英雄のヘルクレス座…
久しぶりに触れた星座の名前とそれに付随した神話も面白くて
ページをめくる手が速くなる。
教科書じゃ足りないと、インターネットも立ち上げる。
さっきまで眠かったのは何処へやら、俺は夢中になってページをめくった。
…
……
「おはよぉ…って、え？翔ちゃん⁈」
次の日の朝、一番に起きてきた雅紀の声がぼんやりした頭に響く。
「ちょ、ちょっと…
もしかして翔ちゃん、ずっと勉強してたの？
ここじゃ疲れも取れないし、あっちで寝よ？」
「んー…ねみぃ…」
だるい、重い、眠いの三拍子に俺の体が動くはずがない。
「もう…勝手に連れてくからねー！
本当、自分のことだとルーズなんだから…」
雅紀の呆れ声を聞きながら、俺の意識はまたも深く眠りの中へと引き込まれていった。
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