サキュバスですがなにか。【３】 (ページ4)

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転校生が来たからと言って、別に授業が自己紹介の時間に変わるわけでもない。普通に淡々と授業は始まる。僕はいつもみたいに欠伸をしながら、だらだらと板書していた。Aさんもいつも通り、真面目に背筋を伸ばし先生の話を聞いている…はずだった。けど、今日は何かが違かった。

僕は怪しまれない程度に、Aさんを盗み見る。いつもとの違いはすぐに分かった。Aさんはノートではなく小さなメモ用紙に何かを書いている。誰かと授業中に絵しりとりや、用紙上で話でもしているのだろう。誰とやってるんだろ。春原さんかな。授業はつまらないし、紙の行方も気になったので、僕はこっそりとAさんを見ていた。

彼女はしばらくして書き終え…それから斜め後ろに振りむいた。Aさんは後ろから二番目に座っていて、彼女の斜め後ろには誰もいなかったはずだ…いや、昨日までは。
今日からは、そこには帆立君が座っていた。彼はちらりとAさんを見ると、Aさんが差し出した紙を慣れた手つきでぱっと受け取った。

えっ…ちょっと待って。突然の事で頭が追い付かないよ。どうしてAさんは帆立君に手紙なんか書いたんだろう。それに何で帆立君もまるでそれが当たり前というように受け取っているんだ？
僕の知らない世界が僕を取り巻いているみたいで、謎の気持ち悪さを感じた。

と、背後から気配を感じた。恐る恐る振り返ると…教科書を持った先生がそこにいた。

「高島瑛一君、教科書132ページの本文5行目の活用形は『侍らず』ですが、ではこれは何活用ですか？」

みんながこっちを見て、いつもの日常的やり取りをしているとクスクス笑っている。ふとAさんを見る。彼女も、みんなと同じようにこっちを見て笑っている。いつもなら、可愛さを感じるその笑顔も、何故か今日だけはニヤニヤと笑っているように見えてしまった。

もう、泣きたかった。僕が馬鹿すぎて。

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