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「なっ、何でAがいるんだよ」
「おかしいと思ってたのずっと。今さら急に私の目の前に現れるなんて。何か夕凪が企んでいる事があるんじゃないかって思ってた」
2人は険悪な雰囲気の中、話を進める。あのー、ここ僕の家なんだけど。
「夕凪はずっと私を瑛一から離そうとしてたわね」
「あぁそうだよ。お前は俺といるべきだから」
「今さら?もうずっと昔、そっちが先に私から離れていったくせに?」
「そうだよ、悪いかよ」
2人は許嫁であったという話は聞いていたけど、先に帆立君がAさんに別れを告げていたのか。
それで、今になって目の前に現れた、と。
「違うでしょ。夕凪の目的は私じゃない」
思わずAさんの顔を見た。いや、どう考えても帆立君はAさんの事を取り戻しに来てるでしょ。帆立君もぎょっとした様子でAさんを見ている。
「夕凪の本当の目的は瑛一」
唐突に出てきた僕の名前。
それは、僕を仰天させるのには十分だった。
「何を言って…」
帆立君の顔を見る。そんな事ないって、言うだろうと思った。けれど帆立君はAさんの言葉がクリーンヒットしたようで、形の整った唇を噛みしめている。
嘘だろって思った。まさかそんな事、想像しているはずもなかった。
「これは予想だけど、私を先に見つけた夕凪は、その後で瑛一の存在を知ったんじゃない?より良いモノを第一に求める高級志向の夕凪は、瑛一を見つけたら自分の物にしたいはずよねぇ」
挑発するかのように、少し上から物を言うAさん。
形成は逆転したのだろうか、今は帆立君が下を向いて手を握りしめている。
「だから私を瑛一から離そうとした。違う?」
「違わないよ…」
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作者名:稲穂 佳子 | 作者ホームページ:http://uranai
作成日時:2019年3月15日 15時