サキュバスですがなにか。【３】 (ページ27)

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ベッドに座って無音の中、帆立君を待った。約束の時間1分前。
何を話すってんだろう。僕が話したいのはAさんなんだけどな。

そんな事を考えていると、急に周りが薄暗くなったような気がした。
いや、暗いのは夜だから当たり前なんだけど、ついている電球の光がやけに遠く、暗く感じるんだ。
だんだんと部屋の隅が見えなくなっていって、その隅で何かが起きているような錯覚に陥る。

ベッドから立ち上がり、数歩進む。
ますます目の前に広がる僕の部屋は暗がりに紛れていって、不安になって、振り向く。
そこにはさっきまで僕が座っていたベッドはなかった。

その代わり、帆立君が立っていた。

彼はニヒルな笑みを浮かべて、僕に手を伸ばす。
すっかりと闇に包まれた空間の中、僕は逃げる事なんか出来ない。
無限に広がっている闇は奥が見えなくて動けないんだ。

ただ近づいてくる手を見ていた。

「――やめなさいっ！」

鋭い声が届いた。帆立君の手と、僕との間に躍り出た誰かがいた。
見慣れた華奢な肩、背中。

その瞬間、ふっと周りが明るくなった。じんわりと僕の部屋が浮かび上がる。
次瞬きをしたら、そこはもう僕の部屋だった。狭苦しい僕の部屋。
そこに帆立君とAさんと僕が立っていた。

「…Aさん」

僕は掠れた声で名前を呼んだ。微かに、Aさんの髪が揺れた。