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僕らは顔を見合わせながらも、先生に言われたとおり素直に席についた。自然とクラス内はざわめきが収まる。
「文化祭前という忙しい時期だが…そんな中、転校生が来てくれたぞ。今日から、同じクラスの一員として共に生活してもらう。じゃあ帆立くん、挨拶してくれるかな」
そう言って先生は男子に挨拶を促す。
薄く男子は頷いて、それから僕たちの方へと視線を流した。
闇を思わせるような真っ黒な髪は、彼が動くたびにさらと揺れている。逆に肌は透き通るように白く、ほっぺはほんのりと赤く染まっているようだった。背丈は普通だが、逆に華奢さが目立ち、ますます彼の魅力を引き立てているよう。
多分…女子達は、すぐに彼に夢中になるんじゃないか?
「帆立夕凪、です」
それから彼は元の学校名、好きな教科等々…よく自己紹介で言うことを述べた。1番最初に言った元の学校の名前は、頭が良いということでかなり有名な学校だった。僕のクラスで1番秀才な奴でさえもびっくりしていた。
ということで、彼がすごくよく出来た人間ということが出会って数分で理解できた。
頭が弱い僕でも理解できるだなんて、すごいなぁ僕!!
というジョークはまぁ置いておいて…先程思ったとおり、クラスの女子はほとんど帆立くんの事を意識しているようだった。
仲の良い女子同士で目配せし合ったり、小声でひそひそ言っていたりしている。
もしかしてAさんも他の女子と同様、帆立くんの事を良いなぁと思っているのだろうか…?僕なんて霞んで見えているのか…?
恐ろしさと不安を抱えながらも、僕はそっと彼女の方を見た。
そこには、いつも通りのAさんがいた。
特に色めきだった様子もなく、普通に椅子に座っている。いや、どちらかというと転校生に興味がないのだろうか。全く彼の事を見ていないし、なんなら視線は机へと下がっていた。
若干の違和感を覚えたけれども…なんか嬉しい。
ドラマや漫画のように席が隣…とはならず、普通に帆立くんは1番後ろの空いていたスペースに座らせられていた。
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作者名:稲穂 佳子 | 作者ホームページ:http://uranai
作成日時:2019年3月15日 15時