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お店が何も開かれていないが故に、生徒もお客さんも誰もいない裏庭。
果たして――彼らはそこにいた。
数メートル先にいる彼らはまだ僕に気が付いていない。
想像していたよりも2人は冷静な感じで、そこはほっとするけど、まだ何も解決していない。
会話をこっそり聞きながら、出て行くタイミングを待った。
「…だから言ってるでしょ。私、夕凪と一緒に行くつもりないよ。みんなと学校生活送りたいし」
「前はあんなに泣き虫で、人間と関わろうとしなかったお前が?」
「うん」
「インキュバスの俺がいてくれるだけで良いって言ったお前がか?」
「...うん」
Aさんは決まりが悪そうに、俯きがちに立っていた。
帆立くんは腕を組んで困ったようにAさんを見つめている。
「じゃあ約束通りあの男子を傷つけるけど良いの?」
「だめっ…!」
帆立くんの言葉に、強く反応したAさん。ここからは遠すぎて表情は分からないけど、帆立くんが少し動揺した風に動いたから、もしかしたらすごく本気なのかもしれない。
「それはさせない」
「馬鹿、言ってる事がメチャクチャ。交換条件だろ、どうすんだよ」
「とにかくあなたはこの学校から出て行って。そして2度と私の目の前に現れないで」
Aさんはそう言い捨てて踵を返した。
帆立くんはその後ろ姿を見ていて…それから、急に走り出した。
そして、Aさんの腕を掴む。
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作者名:稲穂 佳子 | 作者ホームページ:http://uranai
作成日時:2019年3月15日 15時